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綿矢りさ『夢を与える』

2008-01-12 16:22:57 | ノンジャンル
 朝日新聞の年末の特集記事「2007年 心に残った一冊」の対談で言及されていた綿矢りささんの「夢を与える」を読みました。
 32才の幹子は27才のフランス人トーマと別れたくなくて、避妊具に細工をし、妊娠して夕子を産みます。夕子はCMの中で成長していくというチーズ会社の企画CMのモデルに選ばれ、幼いころから世間で「ゆーちゃん」として親しまれます。小6からは大手事務所と母が共同で彼女のマネージャーとなり、テレビやグラビアの仕事も入るようになります。一般の高校に入り、しばらくして仕事仲間の葬式での自然な振るまいがテレビに流れると、彼女の好感度は急上昇し、仕事は格段に増えて、学校では眠り、放課後深夜まで仕事をし、2時間の睡眠でまた学校へ寝に行くという生活が始まります。それでも、普通の女の子のイメージを守りたいということから、一般入試で受験することになりますが、ミュージシャンの恋人ができ、勉強していても実に入らず、受験した7校全部不合格になります。その上、ミュージシャンとのセックスの動画がネット配信されてしまい、彼女は仕事を干され、母の指示に従わず、週刊誌にすべて本当のことを話してしまうのでした。

 上のあらすじは夕子を中心に書きましたが、これ以外にも父と母の確執や、母と夕子の確執などが描かれています。そしてもうお気付きのことと思いますが、「夢を与える」アイドルの話は、読者には「夢を与えない」話になっています。綿矢りささんは、芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」を読んでいますが、やはりこの小説と同じように読み終わって嫌な気持ちになり、不愉快になります。おそらく著者は確信犯的にそうした結末にしているのでしょうが、その目的が見えません。もしそうした世界観をお持ちなら、私とは相容れないということになります。ということで、私はこの小説、というより綿矢りささんはあまり好きになれなかったのですが、皆さんはいかがでしょうか?