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ダニエル・シュミット監督『今宵かぎりは‥‥』

2007-11-22 18:38:47 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、ダニエル・シュミット監督の'72年作品「今宵かぎりは‥‥」を久しぶりに見ました。
 5月16日、聖ネポムーク祭の夜。チェコのある貴族は召使いたちのために客を呼んで宴会を開きます。この夜に限り、主人と召使いの上下関係は入れ替わり、主人が給仕することになっていました。
 やがて芸人の一座が到着し、男は愛の歌「今宵かぎりは」を歌い上げ、男優(ペーター・カーン)と女優(イングリット・カーフェン)が「ボヴァリー夫人」のラストシーンを演じ、羽飾りをつけた女がクラシック音楽に乗せて白鳥の舞いを披露します。女優はある貴族に、今でも愛していると言うが、拒絶されます。彼女は愛を想像した者が処刑されるところを見たいと言います。イタリア民謡がドイツ語で女優によって歌われます。次にはヴァイオリンによるバラードの演奏が、黒いヴェールをかぶった女によって、客席を練り歩きながら行われます。その最中、一部の貴族が降霊式を行います。入り乱れて歩く貴族と召使いたち。女優が明るい調子の愛の歌を歌います。その歌に合わせて踊る貴族と召使いたち。男が進み出て、イタリア語で「革命の期は熟した。一緒に戦おう」と召使いたちに語り挑発しますが、貴族と召使いたちは爆笑します。楽しそうに貴族と会話したり、踊ったりする召使いたち。芸人の一座の彼らに加わります。
 客は帰り、召使いは本来の仕事に戻ります。華やかな音楽のもと、芸人たちも去って行きます。女優が去る時だけ、美しく楽し気な音楽に変わります。「今宵かぎり」の歌が流れる中、女主人の前で召使いは膝まずくのでした。
 上のあらすじからも分かるように、エピソードが断片的に積み上げられていく構成を取り、登場人物は異常にゆっくりした動作で、不安を煽る音楽や音が流れ、台詞が極端に少ないため、無声映画を見ているような気になってきます。長回しのショットを多用し、宴会の進行を無感情に捉えて行く(というか、登場人物が無感情)映画で、非常に奇妙な印象を持ちます。おそらくこれまでにこんな映画はトーキーになってから存在しなかったでしょう。それだけに最初に見た時のショックは忘れられません。まだ見ていない方には、是非見ることをオススメします。