gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

金城一紀『映画篇』

2007-11-03 16:11:18 | ノンジャンル
 金城一紀の最新作「映画篇」を読みました。映画に関わる中編5作からなる本です。
 第一話「太陽がいっぱい」は、アクション映画が好きで映画の話をよくしていた2人の少年のうち、1人は小説家になり、1人は暴力金融の取立屋になりますが、足を洗って宮古島の牧場で働くようになり家族もでき、そこで昔の友人が小説家になったことを知るという話。
 第二話「ドラゴン怒りの鉄拳」は、夫が会社の不正に関わり自殺してしまい、自宅にこもるようになってしまった女性が、ビデオレンタル屋の店員と仲良くなり、彼の撮った映画を見せてもらい元気になるという話。
 第三話「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくはトゥルー・ロマンス」は、心に傷を持つ石岡というクラスメイトの女の子と仲良くなり、二人で石岡の父のお金を強奪し、逃走先で「お前が好きで、お前を守って行く」と告白する話。
 第四話「ペイルライダー」は、主人公の少年を目の仇にする少年とその仲間たちに主人公が囲まれていた時に助けてくれた、でかいバイクに乗る黒づくめのおばちゃんにバイクに乗せてもらった主人公は、バイクが10年前に亡くなった夫のものだと言う。その夜、おばちゃんの家族の車に爆薬を仕掛けて、おばちゃん以外の家族を死なせたやくざに、おばちゃんは立ち向かい復讐を果たすという話。
 第五話「愛の泉」は、おじいちゃんが死んで元気のなくなったおばあちゃんのために、おばあちゃんがおじいちゃんと初めて見た映画の上映会をやろうと相談した孫5人が、公民館での一般公開の「ローマの休日」の上映会を成功させ、おばあちゃんの元気を回復させられた、という話。

 まず、感じたのは、今までの金城一紀さんの小説とは全然違うということでした。今までは若者が共通の敵に対して戦うというものでしたが、今回はまったく違い、若者の躍動感といった感じではなく、「愛の泉」を除けば、重く、暗く、読んでて長く感じるものばかりでした。そういう点では、かなりがっかりしました。
 この小説の特徴は、すべての話に共通した話題が出て来ることで、区民会館の「ローマの休日」の上映、薬害訴訟の話、レンタルビデオ屋の〈ヒルツ〉、映画マニアの亀有、不倫がテーマのつまらないフランス映画のうちのいくつかが必ず小説の中に出てきます。
 そうした楽しみはあるのですが、何か普通の小説になってしまっていて、私はやはり今までの読んでて血が熱くなるような金城一紀さんの小説の方が断然好きでした。また、前の世界に戻ってきてくれることを期待します。
 ちなみに、詳しいあらすじは「Favorite Novels」の「金城一紀」の項に載せておきましたので、興味のある方はご覧ください。