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マルジャン・サトラビ『ペルセポリス(2)マルジ、故郷に帰る』

2007-11-19 19:14:48 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 オーストリアに着いたマルジは、母の親友のはからいで尼の寮に入れられますが、パスタを鍋ごと食堂に持ち込んでテレビを見ながら食べているのを咎められ、修道院長を売春婦呼ばわりし、退寮処分になり、親友のジョリーの家にやっかいになります。
 ジョリーは今までに18人の男と関係を持つという女性で、マルジは控えめなジョリーの母と気が合います。
 15才から16才にかけて肉体的に急速な成長を遂げたマルジはパンクヘアになり、麻薬も覚え、一時は学校の麻薬仲買人までやり、アナーキストの集団とも付き合い、恋人との出会い・別れを繰り返し、当時世界から「悪の権化」とされていたイランの人間であることで傷付きます。
 ジョリーの家を出て入居した共同住宅の頭のおかしい家主ともケンカして追い出され、終いにはホームレスとなって、気管支炎で喀血し、病院に運び込まれます。
 家族からすぐに戻って来るように言われ、久しぶりに落ち着ける場所で時間を過ごします。しかし政情はイスラーム政権の独裁が進み、デモ参加者たちは皆処刑され、民衆の抵抗は禁止されていることを密かにやる、という形になっていき、革命防衛隊の行き交う外界では無慈悲で理不尽な行為が繰り返されていました。アイデンティティの喪失からうつ病になりますが、自殺未遂を経て、自分という存在を受け入れる決意をします。
 恋人のレザーと大学の入学試験に受かり、私は美術科に入ります。レザーと結婚しますが、最初から衝突の連続で、別居に等しい同居生活を送ります。
 そしてパラボラ・アンテナの普及が外の世界の価値観を国内に持ち込み、男性偏重の国から出て行く決意を固め、レザーとも離婚し、フランスの装飾美術学校へ旅立ちます。母は「この国に戻ってきちゃだめよ」と言い、私が一番多くのことを学んだ祖母とは、その後1度しか会えなかったのでした、という話です。

 かなりはしょりましたが、オーストリアでの生活が大部分を占めます。1巻目に負けないリアルさ、現実を見つめる冷徹な目、少女から大人になっていく女性の心の動きの描写の見事さ、どれを取っても一級品だと思います。これからはイスラーム政権と民衆をきちんと区別して考えなければならないことを学びました。またイランで何故優れた映画が撮られているのかも分かった気がします。イランに対しての偏見を取り除くためにも、ぜひ1人でも多くの皆さんに読んでいただきたいマンガです。
 なお「Favorite Books」に「ペルセポリス」2册の詳しいあらすじと著者の略歴を載せておきましたので、興味のある方はご覧ください。