一般財団法人 知と文明のフォーラム

近代主義に縛られた「文明」を方向転換させるために、自らの身体性と自然の力を取戻し、新たに得た認識を「知」に高めよう。

『失われた歴史』刊行

2010-10-01 21:51:52 | 書評・映画評


イスラームの本質は
「知の探究」と「宗教的寛容」!!

 平凡社から『失われた歴史』(北沢方邦訳)刊行される

 9月17日、平凡社から『失われた歴史―イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』が刊行されました。「物語イスラーム文明史」と呼んでもいいほどの巧みな叙述で語られる本書は、現代イスラームをより深く理解するためにも、必読の啓蒙書と言えます。

 イスラームは中世から近世初頭にかけて華麗な文明を築き上げました。本書は、その哲学、数学、天文学、医学、化学、物理学、さらには建築、音楽などが、いかに近代科学・思想・芸術に大きな影響を与えたかを、精緻に、しかしわかりやすく記述しています。

 たとえば地動説の創設者は16世紀ポーランドのコペルニクスだと言われていますが、すでに13世紀のイスラーム世界に、地球や惑星が太陽の周りを回転している事実を正確に計算した科学者がいました。バグダッドからイル・ハーン国の首都アゼルバイジャンに招かれ、当時世界最大の天文台を造営したアル‐トゥシーです。コペルニクスの地動説は、このアル‐トゥシーたちの文献からの借用であることが本書を読めば理解できます。 

 次の文章は、訳者である北沢方邦先生のあとがきからの抜粋です。

 イスラーム天文学者たちは「地動説」や地球自体が球体であることを認識し、数々の書物として書き表していた。他方中世からルネッサンスにいたる西欧の学僧や知識人たちにとって、イスラームの知の一大中心地であり、大学や膨大な蔵書を誇る諸図書館を有するコルドバへの留学が、あこがれの的となっていた。したがって知識人の教養の基礎は、当時のリングア・フランカ(国際語)であるアラビア語の習得であった。……こうした「失われた歴史」の再発見が本書の醍醐味であるが、同時にそれは歴史観の変革にも寄与することとなる。

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                 2010年9月27日 J.Mosa
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『失われた歴史―イスラームの科学・思想・芸術が近代文明をつくった』
マイケル・ハミルトン・モーガン著/北沢方邦訳
平凡社刊/四六判上製/448頁/定価3,360円(税込)
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1 コメント

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読み終わりました (くにたち蟄居日記)
2011-02-20 23:08:48
 はじめまして。本書を読み終わりました。ブログとアマゾンにレビューを載せました。大変勉強になりました。
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