一般財団法人 知と文明のフォーラム

近代主義に縛られた「文明」を方向転換させるために、自らの身体性と自然の力を取戻し、新たに得た認識を「知」に高めよう。

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新刊 ベル・フックスの芸術論

2013-03-21 21:39:46 | 書評・映画評

ベル・フックス著

アート・オン・マイ・マインド  アフリカ系アメリカ人芸術における人種・ジェンダー・階級
三元社より好評発売中です。

 

ベル・フックスは現在アメリカ合衆国で最も注目されるカルチュラル・スタディズの研究者にして批評家、文学、映画、美術、音楽、建築など広範な守備範囲と、複雑な考察も分かりやすく、かといって読者の怠惰におもねる「読みやすさ」に堕することなく論じる聡明な文章が魅力です。
本書は主に、アフリカ系アメリカ人、特に女性のアーティストによる芸術について論じた批評と、現在活躍する6人のアフリカ系アメリカ人の女性アーティストとの対談を収めた論文集です。
ちなみに表紙に使用したのはエマ・エイモスの作品「ゴーギャン夫人のシャツ」。英語オリジナルの表紙とはちがう、日本語オリジナルのデザインです。図版の版権をクリアする連絡を取ったとき、エイモス氏が快く使用を許可してくださいました。
この女性はエイモス本人、図版が小さくわかりにくいのですが、彼女の着ているTシャツには、ゴーギャンの有名な「二人のタヒチの女」の左側の女性のボディの部分がプリントされています。(この女性は「ゴーギャン夫人」ではないのですが、エイモスはあえて、彼女のことを「ミセス・ゴーギャン」と読んでいるわけです。)西欧の男性芸術家と彼に見られ、描かれる非西洋の女性、という絵画の伝統の中の力の構造を撹乱するユーモラスな身振りと、色の美しさがすてきだと思います。
対談の相手は、このエイモスや、写真家のキャリー・メイ・ウィームスなど、アメリカではすでに著名ながら、日本でもっと知られてほしいアーティストばかり。批評のほうも、比較的よく知られたジャン・ミシェル・バスキアの絵画や、貧しい黒人の生にとって写真の意味するもの、貧困者用の集合住宅に住むことの政治的意味など、洞察に富む論考がスリリングです。
図版のこと等色々苦労はあったのですが、翻訳しがいのある力作で、自分でも愛着のある一冊となりました。
お手にとっていただければ幸いです。

杉山直子(訳者)

 

 

 

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