『アンリ・カルティエ=ブレッソン 時間の記憶』
世界31カ国を訪れ、歴史的場面から独特のポートレート、市井の人びとの日常のなにげない瞬間まで、「激動の20世紀」を撮影したカルティエ=ブレッソンが、自作と人生を語ったドキュメンタリー映画。撮影されたのは2003~2004年。翌2005年8月には95歳で亡くなっている。写真家エリオット・アーネット、作家アーサー・ミラーをはじめ、親交があった人びとのインタビューも挿入される。
彼は、「撮影は短気が一番、パッと撮って逃げろ」と笑う。
「いい写真は音楽的だ」
「即興と本能でフォルムが生まれる」
「見事な構図は演劇に似ている」など、
心に残るコメントがたくさんある。
彼の「夢を撮ったような写真」や「多くを物語る写真」を大きなスクリーンで鑑賞し、彼が愉快そうに思い出話をする様子を見ていると、幸せな気分になる。「写真が人生を満たしてくれた」、「瞬間を選ぶ楽しさ・・・生も死もある。至福だよ」としめくくる。
写真は不思議な媒体だ。人が写っていてもいなくても、殺伐とした廃墟でも凄惨な光景でも、落ち葉でも星空でも、「生きろ、生き続けろ」というメッセージを発している。それはきっと、被写体だけでなく撮影者の気配を感じるからだ。しかも、そのメッセージは映像よりはるかに強く伝わってくる。
(東京・渋谷ライズXにて初夏公開) カタオカ★M
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