ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Procession Ⅲ

2007-06-29 23:15:20 | Weblog
ジャコパストリアスはとにかく特異な才能と個性の持ち主だった。このミュージシャンをうまく使いこなすというのは、大変だったと思う。ザヴィヌルだからできた。その意味でジョーとジャコが出会ったというのは天の配剤かもしれない。ジョーザヴィヌルのジャズに対する考え方はスケールが違う。彼の生い立ちとも関係してるかもしれないけど、ジャズという音楽を長い歴史の中で20世紀の人類が作り出した人類みんなの文化だと捉えているんだ。もちろん彼がとびきりの音楽の才能を備えているからこういう発想が生まれてくるんだ。それを具体化するには、優れたパートナーが必要だ。そして選んだのがウェインショーターであり、ジャコパストリアスであり、ミロスラフヴィトウスだったわけだ。ジョーの即興演奏に対するアプローチを具体化するには、ベーシストにとてつもない耳が要求される。ジャコもミロスラフもその点では天才だ。それをジョーも認めて、ある程度の期間はうまくやっていけていた。でも天才同士はどうしてもぶつかる。関係が悪くなりだすとその度合いもハンパではない。結局このふたりのベーシストとは、喧嘩別れというかたちになってしまった。他のサイドメンともかなりもめたこともあるようだ。もうちょっと穏やかにことをすすめられないものかとも思うけど、これがジョーザヴィヌルのやりかたなんだ。このアルバムのベーシスト、ビクターベイリーも優れたベーシストだ。ドナルドベイリーさんの甥っ子らしい。彼はジョーとトラブルを起こした形跡はないけど、それはジョーのほうもジャコなんかに対するような態度ではのぞまなかったせいだろう。いろんな意味でウェザーリポートをとりまく環境は変わってしまった。このアルバムがリリースされた頃、ウェザーリポートは世界のスーパーバンドとして君臨していた。この翌年には86回もコンサートをやった。でもジョーはこの音楽に本当に満足していたんだろうか?彼がなにを感じてどう思っていたか、分かるひとはいるだろうか?ウェインショーターになら何か本心を話していたかもしれない。でも他には知ってる人はいないだろう。ジョーは今でも現役で今が最高潮だと思って活動を続けている。そんな人に過去のことは聞けないしね。


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