この曲は1943年にデュークエリントンがサキソフォンプレーヤーのJohnny Hodgesのために書いたものだが、その後1958年のデュークのアルバム「Black Brown&Beige」でMahalia Jacksonが歌ってヴォーカル曲としても定着した。歌詞はマヘリアが書いたものだ。形式はA-A-B-A。この曲は何風と言ったらいいのだろう?形容詞があまりない。楽譜を見てみよう。メロディーには♯や♭、いわゆる変化音がサビの終わりのひとつだけ。で、この音はドミナント7THの♯5の音、それだけだ。なのに、コードはドミナントから始まって全音下がってⅡ7があり、内声には♯11THがよく聞こえる。デュークサウンドだ。エリントンは多作家だ。いろんな引き出しを持っている。この曲もデュークの音楽教養の一端だと言ってしまえばそれまでだが、とにかく演奏すると独特の気分になる。音楽の持つメッセージ性というのは不思議なものだ。構造を分析しても分からないものもある。その分析不可能な抽象的なものこそが音楽の「核」の部分かもしれない。それは12音平均律も楽器もなかった太古の昔から変わらないものだ。音として聞こえてくるものは「音楽」のほんの一部分にすぎないのだ。
ブラック・ブラウン・アンド・ベージュ | |
Naxos | |
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