ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

How About You? Ⅲ

2015-12-01 03:08:49 | Weblog
この曲は4度進行を基本とした機能和声で整然と管理されている。シートミュージックのコードのままでもジャズとしての演奏ができなくもないが、やはりリハーモナイズしたほうがいい。この曲特有のある程度の定番のリハーモナイズはあるが、どの程度やるかはミュージシャン個人の判断だ。もちろん機能和声にとらわれず12音的な和声があっても差し支えはない。でもリハーモナイズで頭に入れておかなければいけないのは「調性」だ。調性の問題を根本的に考えると、ひとつの調性は聴覚のよりどころとなる主調の和声とそれと関連づけられる和声とのバランスによって理解の度合いが変わってくる。だからリハーモナイズには全体を通して聴覚に「調」を感じさせるための設計図が必要なのだ。もちろんリハーモナイズにはいろんな目的がある。不安定な調性をわざと意図する和声があってもいい。でもこうやればこうなる、という裏付けがないと、そのリハーモナイズは筋の通らない主張をするレベルの低い音楽なってしまい、それではリハーモナイズの意味がなくなってしまう。トニックとなる和声を変化させるのはリハーモナイズの定番ではあるが、主調となる和声が正しい位置に存在し、そしてある程度反復してあらわれ、近親和声がまわりからサポートする形がないとそもそも楽曲が成立しなくなるという調性音楽の原則を忘れてはだめだ。インプロヴィゼーションをやっているときのジャズミュージシャンは特別な聴感覚の世界にいる。ある意味一番正しく音楽の良しあしを判断できる状態にあるのだ。リハーモナイズや楽曲のアレンジはアドリブをやってから決める、これがジャズミュージシャンの特権ではないだろうか?


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