ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

How About You? Ⅳ

2015-12-13 03:51:48 | Weblog
多声部音楽はポリフォニックに近づくほど複雑で理解するのがやっかいになる。いわゆるホモフォニックな音楽は単純だけどわかりやすくて力強い。和声だけに絞って考えてみると、半音的なものは複雑で全音的なものはわかりやすい。これは音楽だけではなくて他の芸術、もっと言えば人間のまわりにあるものすべてに存在する対比だ。もちろんイエスかノーか?というような二者択一の問題ではないが、どちらよりか?という傾向はある。音楽、ジャズに関して考えてみよう。ある二種類のリハーモナイズを思いついたとする。そのふたつのコードがレベルの高い内容ではあるが複雑で伝わりづらいものと、わかりやすくて力強いけどちょっと単純なものであったら・・・。どちらを選ぶかはセンス、全くの自由だ。でもその選択には無意識にジャズという音楽の価値観が大きく影響していることを認識しておいたほうがいい。つまりジャズの本分ともいうべき「Hip&Crazy」だ。ジャズが生まれて100年、モダンジャズという名前ができてからでもすでに80年近くが経過した今、こんな標語みたいな言葉を引っ張り出すのもどうかと思うが、文化にはやはりなんらかの裏付けがあり、またそれが必要なのだ。人間の価値観は生きている時代の空気に大きく左右される。ジャズの価値観も数十年前とは変わってきた。でも変わらない、変えてはいけないものもある。HipでありCrazyであり続けないとジャズはジャズでなくなってしまうのだ。


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