ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Domino Theory

2007-07-04 01:10:38 | Weblog
ウェザーリポートの末期の作品、と言っていいと思う。ウェザーリポートというバンド名はついているけど、完全なジョーザヴィヌルバンドだ。この中の「D Flat Waltz」、この後コンサートでも何時もやってた、ザヴィヌルらしい曲だけど、こんな複雑な曲をライブでやるジャズバンドを聴いたことがない。誰も譜面は見ない。暗譜はこのバンドの法律だ。リハーサルは大変だろう。ここまで複雑だと決まりを守って演奏するだけで目一杯になる。でもザヴィヌルはそんなことは許さない。ベイリーはよく頑張っている。ジャコの後釜というだけで大変なのに、ジョーの持ってくる曲は以前にもまして難しい。この中でジョーの想像以上のプレイをしてジョーに刺激を与えるというのは無理だろう。ベーシストの役割はいろいろあるけど、この頃ジョーはベーシストによりベーシックなものを求めるようになった。それによってかえって自分が自由になれるからか、ベイリーの能力をそこまでだと思ったのか本心は分からない。オマーハキムのドラムは強烈にスウィングするし、曲はザヴィヌルの創った一流のレパートリーだ。でもこのバンドは即興的で高級なアプローチをするジャズバンドではなくて、品のいいR&Bバンドみたいになってしまった。ウェザーリポートのアルバムは発売されるとすぐに買って繰り返し繰り返し聴くのが当たり前になっていたけど、このアルバムは何度も聴く気にならなかった。何かが終わろうとしている感じがした。


コメントを投稿