セロニアスモンクはジャズの歴史の中でも突出した存在の奇才だ。ジャズはインプロヴィゼーションが根底にある極めて構造的な音楽で、それには12音平均律が前提になっている。モンクの和声は12音でしか成り立たない微妙なものだ。モンクの頭の中にある12音の組み立ての方法論はジャズという音楽の多様性を表現するのにピッタリだったのだ。その独特のハーモニーセンスはブルースの演奏の時にももちろん発揮されている。モンクはトライトーンについてどんな感じ方をしていたのだろうか?彼の中でのブルーノートの存在はどういったものだったのだろうか?こういった音程やハーモニーは説明さえしてもらえば誰でもすぐ分かる。でもそれを自由に自分の音楽の中に使えるようになるのには相当な時間がかかる。それが「ハーモニー」なんだ。増4度や長7度の使い方がサウンドを左右することはしばらくジャズをやってればほとんどの人が気がつく。でもそれを使いこなすのが大変なんだ。簡単には自分の音にならない。人間は自分に対してないものねだりをしがちだ。ああしたい、こうなりたいと思って音楽を組み立ててもそれが自分本来の音かどうかはなかなか分からない。自分のことを客観視するのは至難の業だ。でも他人には意外なくらい簡単にわかられているものだ。だから時には共演者、そして聴衆にも意見や感想を聞いてその中から自分の音楽を考えてみる必要がある。