ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

When I Fall In Love Ⅲ 

2015-11-03 01:43:01 | Weblog
この曲はジャズスタンダードとして認知されている曲であるからもちろん付随する全体のサウンドやコード進行もジャズとしての価値観に裏打ちされたものが同時に認められている。それは4度進行を基本としたコード進行とそれのリハーモナイズ、そしてそのコードに加えられたテンションだ。一方メロディーだけに注目するとこれは確固たる調性を持った7音音楽だ。つまり、もとになるメロディーと調性を司るカデンツアはいわば古典的な音楽構造でそれに「何か」を加えているだけなのだ。実は調性音楽の基本となるカデンツアの起源は意外と古く、12世紀だと言われている。まだピアノなんて影も形もない。音楽を組み立てる上でこのカデンツアが重要性を増してきたのは18世紀前半ラモー以来だ。時間の経過と音楽の変化のスピードがピンと来ないがこれは産業技術の発達による楽器の変化、12音平均律の完成が大きく影響している。とにかく18世紀後半以降音楽は加速度をつけて変化しだしたのだ。現在では調性そのものを否定する音楽もそしてインプロヴィゼーションを主体とするジャズもすべて音楽として認知されている。音楽というのは何が変化しないで何が変化するのか?見極めるのが本当に難しい。過去の優れた作曲家はその時代の感覚を自分の「言葉」としての音楽で表現してきた。過去のその音楽を求める聴衆に提供する立場のプレイヤーであれば研究して練習そして表現、それにつきるが、インプロヴィゼーションは違う。自分がその時代の感覚の表現者なのだ。これがジャズの価値のすべてだ。博物館に入ってはだめだ。

スティーミン
マイルス・デイヴィス,レッド・ガーランド,ポール・チェンバース,フィリー・ジョー・ジョーンズ,ジョン・コルトレーン
ビクターエンタテインメント


コメントを投稿