ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

When I Fall In Love Ⅳ

2015-11-10 01:06:06 | Weblog
複数の声(声部)が同時に進行するいわゆる多声部音楽がいつ頃から始まったのか?明確な時期はもちろん特定はできない。でも12音の完全な平均律が整備されるまでがすごく長くて、12音が理論上も確定してからの音楽の変化、発展のスピードがすさまじいことは確かだ。いっぱいある声(声部)のうち一番高い音が旋律、メロディーだ。もちろん旋律も多声部の中のひとつではあるが、音楽を印象づけるもっとも重要な声部であることも確かだ。これがホモフォニックな考え方であるともいえる。「旋律は流れる水で和声はその流れの中にあるゴツゴツした岩である。」ヒンデミットのこの考えに立てばメロディーに対する綿密な工夫は避けては通れない。メロディーには一定の「区切り」が絶対必要でそれをモティーフと呼ぶ。で、それを印象づけるには人間の感性に対するもっとも簡単な手段として「繰り返し」がある。この「When I Fall In Love」も明らかに最初のモティーフを繰り返している。繰り返しにはリズムパターンと音程という要素がからんでくるから完全な繰り返しではない場合も多いが、それが繰り返し(リフレイン)であるかどうか注意深く見抜かなければならない。そして楽曲全体を見た場合、こういうモティーフ(動機)となるフレーズの種類が何種類あるか?というのが重要なのだ。これは人間の記憶力が関係してくる。あまりに種類が多いと覚えきれない、でも少なすぎると音楽が単調になる。この程度問題が難しいのだ。インプロヴィゼーションにも同じことが言える。一曲のアドリブの中にいっぱいのアイデアを詰め込んでも無駄だ。音楽としての説得力はかえって弱くなる。人間の感性に適したアイデアの量と時間、これに気をつけないとインプロヴィゼーションはやってるほうも聴いてるほうもただ疲れるだけになってしまう。


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