ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Us Three Ⅱ

2007-03-12 14:52:48 | Weblog
ホレスパーランの奏法を見ていると、ピアノの弾き方そのものを根本的に考えさせられる。ピアノの奏法というのは、いろんなミュージシャンの工夫で自然にできたものもあれば、一人の天才が作り上げたものもある。で、音楽を勉強するときはそれをちゃんとものにするまで練習するわけだ。まあいろいろある。ジャズのコンテンポラリースタイルといわれるものでも、身につけなけなければいけないことはたくさんある。でも結局はその中から自分に合ったものを選んで自分なりに改良して演奏するわけだ。左手のボイシングひとつ取っても、音使いもタイミングも本来はバンドで演奏することを前提として、いい響き、より良いスウィング感を出すためにたくさんの優れたピアニスト達の工夫で出来上がってきたもので、これじゃなきゃダメという代物ではない。ホレスパーランは指が足りないからもちろんこのオーソドックスなスタイルでは弾けない。でも彼のスタイルは自分で考え抜いて編み出したものだから必然性がある。物事を勉強するときはもちろん過去にあった優れたものを研究して身につけるのは当然のことだ。でもそれがルーティーンになってしまったらその瞬間にそれは自分のものでなくなる。音楽にならなくなってしまうんだ。学んだルーティーンだけをやっていればことが済む職業もあるけど、芸術はそうはいかない。自分がやっていることの「理由」を深く理解して、学んだことを自分のものとして表現しなければ、意味がない。ホレスパーランが才能を発揮でき、一流のピアニストとして世間に認められるというのは、ジャズという音楽の一番いいところだね。


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