戦勝祝い式典
三国流転 立志編 vol6 第11話 明暗
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西暦645年 安市城(アンシソン)の戦い
唐の皇帝イ・セミンに対抗ヨン・ゲソムンは、90日間に及ぶ戦いで30万もの敵兵を撤退させ
唐の奴隷として生きることを拒んだからだ。
時は戻り、西暦598年
ヨン・ゲソムンは父の敵に襲われ、逃亡先の新羅でキム・ユシンの家に雇われた。
随文帝(ムンジュ)は勢力拡大を狙い、高句麗を脅かしていた。
高句麗王ヨンヤンは、少数の親衛軍を率いて隋に先手を打った。
隋文帝は大軍で応戦。対戦の火ぶたが切って落とされた。
ヨン・テジョとウルチ・ムンドクにより、陸、海軍ともに隋を打破。高句麗は圧勝を収めた。
才あるヨン・ゲソムンは下男の身でありながら、花郎(ファラン)の修練を積むことになった。
檀記(タンギ)2931年
西暦598年2月
高句麗が先手を打った隋との第一次大戦は、陸、川、海において高句麗の完全勝利で終戦を迎えた。
中国の歴史書と「三国志記」には、この大戦について、こう記されている。
漢王(ハンワン)リャンの軍は臨楡関(イミョングアン)を出たが、悪天候に見舞われ食料の供給が絶たれた。
飢えたところに伝染病がまん延し、過半数の兵が死んだ。
チュラフの水軍は、暴風に襲われ多くの船が沈没。
軍は9月に戻ってきたが、兵の8~9割は命を落としていた。
中国は完敗した戦について隠さずに記したのである。
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オングン将軍:コ・ゴンム様、近衛将軍のオン・グンです。
コゴンム殿下:オン将軍、陛下はどちらだ。
オングン将軍:莫離支(マンニジ)をおたずねになってからチュモ王の神殿に行かれると
コゴンム殿下:莫離支(マンニジ)のところへ
オングン将軍:ご用体が優れないようです。
コゴンム殿下:戦で多くの兵が犠牲となった。気の毒なのはマンニジだけではない。
オン将軍、行くぞ
オングン将軍:近衛兵、凱旋軍を連れてこい。
ヨンテス将軍:儀仗兵と軍楽隊は儀式を執り行え。
コ・ゴンム様が率いる凱旋兵のお通りだ。
ヨン・テジョ邸。
ヨンテジョ:ご足労いただきまして誠に恐縮でございます。
陛下:体調が優れぬようだな。
ヨンテジョ:陛下の軍が凱旋されたそうですね。おめでとうございます。
陛下:そなたの功があってのことだ。
ヨンテジョ:陛下のお力が勝利をもたらしたのです。
陛下:それはちがう。
もし、マンニジがいなければ、我が高句麗は戦いもぜずに消えたであろう。
ヨンテジョ:そのお言葉、身に余る光栄です。
陛下:今、凱旋軍が戻ってきている。そなたも参加を。
ヨンテジョ:重ねてお祝い申し上げます。
ですが、体調が優れずお伺いできません。
陛下:西土(ソト)の件は誰に相談しろと?
ヨンテジョ:焦ってはいけません。これは後の世に続く長い戦いです。まだ始まりにすぎません。
大勝式典。
コゴンム:
太王弟であり水軍大将の私、コゴンム。
陸軍将軍大模逹(テモダル)であるウルチムンドク。
褥薩(ヨクサル)に早衣(チョイ)。
靺鞨(マルガル)の部族長、アソチンと兵士一同が、大勝祝いをご報告いたします。
ヨンヤン王:
よく戦って戻ってきた。
我が国の列聖朝(ヨルソンジョ:歴代の王たち)にこの勝利を報告しよう。
高句麗の祖、チュモ王そして列聖朝(ヨルソンジョ)よ。
高句麗第26代王である。私コ・ウオンがお伝え申し上げます。
桓国代々(ファン国)の桓因(ファンニン)
倍達国(ペダル)の桓雄(ファンヌン)天王
そして檀君王倹(タングンワンゴム)よ。お喜びください。
とりわけ、戦の神である蚩尤(チウ)天王。
高句麗は隋と戦いました。
遼河(ヨハ)と遼沢(ヨテク) 黄海で圧勝できたのは列聖朝(ヨルソンジョ)のおかげです。
どうかお願いです。高句麗が永久に繁栄するようどうぞお守りください。
列聖朝(ヨルソンジョ)の命令だ、この大勝を多くの国々に知らしめよ。
大高句麗 万歳
高句麗は神の子孫。太陽の子なのだ。
我々はその強い力を隋に思い知らせた。
戦場となった遼河に高句麗を敬う(ウヤマウ)気持ちを忘れぬための、京観(キョングワン)を建てるのだ。
京観(キョングワン):戦勝の記念塔
また歴史書を集め、まとめ上げる。
太陽の国の子孫に我々の偉大さを伝えるのだ。
そして強い力を備えたところで西土(ソト)を目指す。
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ヨンヤン王。
隋に先手を打ち高句麗を圧勝させた彼には確固たる自信があった。
京観(キョングワン)とは戦勝の記念塔のことである。
隋軍の死体を埋めた土地に塔を建設し、高句麗の強さを知らしめた。
さらに太学博士(テハクバクサ)イ・ムンジンは、建国から伝えられる歴史書「留記」を新たに編纂した。
「新集」5巻にまとめたのである。
ヨンヤンが中原奪還に懸けた執念が強かったことがわかる。
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隋 長安城(チャンアンソン)
鞠問(きくもん)場。(罪人を尋問する場所)
文帝:まったく困った奴らだ。
恥をしれ。
戻ってくるとはなんと図々しい
漢王、たった2度の戦いで30万の兵を失ったのはお前のせいだ。
コギャンよ臣下の長でありながら兵士が息絶えるのを黙って見ていたのか
コギャン左宰相:私は何も申し上げられません。どうどご容赦ください。
文帝:ヤンソよ。お前もコギャンと同じ臣下の長であるはずだ。
情けないとおもわんか。
ヤンソ右宰相:お詫びの言葉もありません。
文帝:これが我が子とは。我が国史上、最大の屈辱を受けたのだぞ。
よくも恥をかかせてくれたな。
それでも皇帝の息子か。
恥ずかしくて民に顔向けできぬ。
なぜ、死なずに帰ってきた。
将軍が負け戦の責任を負うのが道理だ。
しかるべき罰を与える。
刑吏(ケイリ)よ来い。
刑吏(ケイリ)よ、リャンに剣を渡せ。
自決だ。
ヘグ:殿下。ヘ・グが申し上げます。どうぞご容赦ください。
報告によると敗因は将軍にはありません。
予測できなかった災害のせいなのです。
自然災害には太刀打ちできません。
どうかお許しください。