おはようございます。
”ベリー公のいとも豪華なる時祷書”は、世界で一番美しい本として知られる。先日、NHKの日曜美術館で放映していたので記録しておこうと思う。この本については、ぼくのブログでも触れたことがあるが、二月の雪景色とか占星学的人体図など、ごく一部だった。今回は、この時祷書のメインの暦頁、一月から十二月までの絵画を通して見ることができた。
時祷書とはキリスト教徒の祈祷文、賛歌、暦などからなる日課書のこと。中世の数ある時祷書の中で、一番名高いのが、本の名前の通り、いとも豪華なこの装飾写本なのである。フランス王族のジャン1世(ベリー公)が、15世紀始めにランブール兄弟に依頼し、制作がはじまったが、途中で二人の生涯を終え、他の人が後を継ぎ、なんと、あしかけ80年近くかけて完成したという。
この時祷書は、仔牛の皮をなめしてつくった羊皮紙にラピスラズリ等高価な顔料をふんだんに使って、細密に描かれたもので、国際ゴシックの傑作と言われている。206葉から成るが、中程の1月から12月までの貴族と農民の季節の生活を描いた部分が有名である。放送でもここを中心に紹介された。
この、いとも豪華なる時祷書はここにある。
パリから40キロほどのシャンティー城。
お城の中のコンデ美術館。
その奥の図書館。
そのまた奥にある門外不出の貴重本。世界一、豪華な本。1頁のサイズが29x21cmで意外と小さい。
こういう見開きで、左に星座と絵画、右に暦やキリスト教の教えなどがラテン語で手書きされている。
まず、春、4月から。貴族の結婚。婚約者に指輪をはめようとしている。
5月は貴族たちの若葉狩り。
6月は農作業の草刈り。
7月は小麦の収穫や羊の毛を刈る農民の姿。
8月は貴族たちの鷹狩り。
9月は農民の葡萄の収穫。右頁は暦。
10月は冬小麦の種まき。背景はルーブル宮殿。
11月はどんぐりを食べる豚。現在もどんぐりを食べさせたどんぐり風味の高級豚肉が生産されているとのこと。
12月は、貴族たちのいのしし狩り。貴族の戦闘訓練の目的もあったとか。
1月は新年のお祝い。ペリー公が右下に大きく描かれる。
ペリー公の衣装の青は高価な顔料、ラピスラズリが使われている。
作者のランブール兄弟も描きこまれている。
2月。雪景色の農村風景。西洋絵画で初の雪景色といわれる。日本ではこれより100年前に雪景色が描かれている。高階隆兼の春日権現験記絵巻(1309)である。
3月の農民の土おこしと葡萄の剪定。
こうして、暦に従って、普通に生活できることが一番の幸せ。その頃、ヨーロッパでペストの流行が起っていたようだ。このような豪華本が出来たことと無縁ではないだろう。
健康に関わる絵画も紹介された。占星学的人体図。当時はヒトもひとつの小宇宙と考えられていた。人体に星座が描かれている。病気の原因も星座と関係があると考えられていた。
下の写真だけは、以前、読んだ岩波書店の紹介本からのものです。牡牛座の人は頭痛持ちではないですか、天秤座の人はお腹が痛いとか(笑)。
それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!