石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2013年版解説シリーズ:天然ガス篇14 消費量(5)

2013-08-05 | その他

(注)本シリーズ「BPレポート天然ガス篇」は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0275BpGas2013.pdf

 

(いよいよ天然ガスの輸出国になる米国!)
(5)主要5カ国の生産・消費ギャップ(輸出余力或いは自給率)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G04.pdf 参照)
 世界の主要な天然ガスの生産国と消費国を並べると、日本やドイツを除く多くの国が天然ガスの消費国であると同時に生産国であることがわかる。例えば米国とロシアはそれぞれ世界1位と2位の生産国であり同時に消費国でもある。カナダは生産国としては世界5位、消費国としても世界7位であり、また中国も生産量世界7位、消費量世界4位である。

 これらの国の天然ガスの生産量と消費量を比べると、ロシアは生産が国内需要を上回り大きな輸出余力を有している一方、米国はカナダから不足分を輸入している。またかつては生産と消費がバランスしていた中国やインドも国内需要が拡大し天然ガスの輸入が急増している。ここではこれら5カ国(米国、ロシア、カナダ、中国及びインド)について1990年から2012年までの生産と消費のギャップ(輸出余力或いは自給率)を見ることとする。

 1990年にはロシアは生産が5,900億㎥、消費が4,076億㎥であり、差し引き1,824億㎥の輸出余力があった。またカナダも生産量1,086億㎥、消費量669億㎥で差し引き417億㎥が米国向け輸出(NET量)に回された。これに対し中国とインドは需要の全量を国内生産量で賄っていた(潜在需要は生産を上回っていたと見るべきであろう)。米国は生産量5,043億㎥、消費量5,429億㎥であり不足分を輸入していた。
 
 その後、ロシアは生産、消費ともに横ばい状態が続き、2012年は生産量5,923億㎥、消費量4,162億㎥でその輸出余力は1990年とほぼ同じ1,760億㎥である。この輸出余力は2009年を除き1990年以降ほぼ一定している。これに対して消費量が生産量を上回る米国では需給ギャップが1990年の386億㎥から年々拡大し、2000年には生産と消費の差は1990年の3倍近い1,175億㎥にふくれあがった。この結果1990年に93%であった自給率は2000年には82%に低下した。

 ところが2010年以降、米国の天然ガスの需給ギャップは劇的に改善し自給率も大きく向上している。即ち2007年に1,087億㎥あった需給ギャップは2010年以降、785億㎥(10年)→420億㎥(11年)→408億㎥(12年)に縮まり、2012年の自給率は94%と1990年当時を上回るほどに向上している。これは言うまでもなくここ数年シェールガスの商業生産が軌道に乗ったためである。

 米国と対照的なのがカナダである。カナダは1990年に生産量が消費量を386億㎥上回り、2000年にはそれが2.3倍の895億㎥に膨れ上がった。しかしその後需給ギャップは年々細り2012年には558億㎥と1990年の水準に近づきつつある。上記の米国の状況と全く逆の様相を示していることがわかる。つまりカナダの天然ガスの需給ギャップは国内の消費量とは全く関係なく米国への輸出の減少そのものに起因しているのである。米国向けの天然ガスの輸出減少がカナダの貿易収支に大きな打撃となっていることは間違いない。カナダは今後極東向けのLNG輸出に本腰を入れることになろう。

 中国は2006年まで天然ガスについて生産即消費の自給率100%を維持してきた。国内生産量は1990年の153億㎥から2006年の586億㎥へと4倍近く増加しているが消費も同様のペースで増加している。これは国内の旺盛な需要に生産が漸く追いついていたと言うべきであろう。しかし2007年以降はついに自給率が100%を割り純輸入国に転落した。その後中国の需給バランスは急速に悪化し、2012年は生産量1,072億㎥に対し消費量は1,438億㎥となり自給率は75%に低下している。

  インドも長い間生産即消費の自給率100%の状態であったが、2004年以降は天然ガスの純輸入国となり、その後需給バランスは年々悪化、2012年は生産量402億㎥に対し消費量は546億㎥に達し、144億㎥が不足する状態で自給率は中国とほぼ同じ74%となっている。

 以上5カ国のうち輸出余力のあるロシア、カナダを除く米国、中国及びインドの3カ国を比較すると、ここ数年で米国の需給が大幅に改善し自給率が改善する一方、中国とインドは年々悪化していることがわかる。米国の場合、この傾向が続けば近い将来天然ガスの純輸出国になるであろう。実際既に米国産天然ガスのLNG輸出が数年以内に実現する見通しである。

(天然ガス篇消費量完)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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