石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2009年版解説シリーズ:石油篇(3)

2009-06-17 | その他

*HP「中東と石油」に本シリーズ(1)埋蔵量~(5)原油価格が一括掲載されていますのでご覧ください。

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Report of World Energy 2009」を発表した。以下は同レポートの中から石油に関する埋蔵量、生産量、消費量等のデータを抜粋して解説したものである。

石油篇(3):世界の石油消費量

(1) 地域別消費量

 2008年の世界の年間石油消費量は日量8,446万バレル(以下B/D)であった。前年と比べるとマイナス0.6%の減少であるが、このように石油の消費量が前年を下回るのは1993年以来15年ぶりのことである。

  消費量を地域別でみるとアジア大洋州が2,534万B/Dと最も多く全体の30%を占め、次に多いのが北米の2,375万B/D(28%)であった。一昨年までは北米の消費量が最も多かったが、昨年以降アジア大洋州が北米を上回っている。これら二地域に続くのが欧州・ユーラシア2,016万B/D(24%)であり、これら3地域で世界の石油の82%を消費している。残りの中東(8%)、中南米(7%)及びアフリカ(3%)の3地域を合計しても18%に過ぎず、石油の消費は先進地域(北米、欧州・ユーラシア)及び新興工業国が多いアジア・大洋州に偏っている(グラフ「地域別石油消費量2008年」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html  参照)。

  各地域の消費量と生産量(前回参照)を比較すると、生産量では世界の31%を占めている中東が消費量ではわずか8%であり、アフリカも生産量シェア13%に対して消費量シェアは3%に過ぎない。これに対してアジア大洋州は生産量シェア10%に対して消費量シェアは30%、また北米はそれぞれ16%、28%と大幅な需要超過となっている。欧州・ユーラシアは生産量シェア22%、消費量シェア24%でほぼ均衡している。このことからマクロ的に見て、世界の石油は中東及びアフリカ地域からアジア・大洋州及び北米地域に流れていると言えよう。

 (2) 国別消費量

 国別に見ると世界最大の石油消費国は米国で、2008年の消費量は1,942万B/D、世界全体の23%を占めている。前年に比べ-6.1%と大幅に落ち込んだが、それでも米国一国だけで実に世界全体の2割強を占めており、第二位以下を大きく引き離す石油消費大国である。米国に次ぐのは中国(800万B/D、シェア10%)であり、以下日本(485万B/D、同6%)、インド(288万B/D)、ロシア(280万B/D)、ドイツ(251万B/D)、ブラジル(240万B/D)と続いている。これら上位7ヶ国の石油消費量が世界全体に占める割合は51%に達する。石油は米、日、独の先進3カ国とBRICsと呼ばれる中国、インド、ロシア及びブラジルの新興4カ国の合計7カ国で世界の半分を消費している(表「国別石油消費量ベスト20(2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/1-D-2-96OilConsumpbyCountries.htm 参照)。

(3) 石油消費の地域別構成の推移

(上図参照。拡大図は「地域別石油消費量の推移(1965~2008年)」 http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html

 図を一見して分かるとおり、1965年には北米と欧州・ユーラシアの2地域が世界の石油消費の大半を占めており、その他の地域の消費量は50万B/D以下に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の消費の伸びが著しく、90年代後半には欧州・ユーラシア地域を追い抜き、さらに2008年時点では北米をも上回り世界最大の石油消費地域となっている。

  欧州・ユーラシア地域を見ると、1965年に約1,200万B/Dであった消費量が急激に増加し、オイルショック直後の1980年には2,400万B/Dに倍増している。しかしその後消費量は減少傾向をたどり1990年代の後半以降は2,000万B/D前後の横ばい状態を続けている。北米地域については1980年代前半に需要が一時落ち込んだが、80年代後半以降は再び一貫して増加を続け2005年には2,500万B/Dに達した。しかし上記(2)に述べたとおり2008年には米国の消費量が前年比6.4%落ち込んでおり、増加傾向に歯止めがかかった形である。

  その他の中東、中南米、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、消費量は着実に増加している。特に中東地域は1965年の96万B/Dが2008年には642万B/Dに増加している。中東にはサウジアラビアを始め石油輸出国が多いが、各国の国内石油消費の伸びが生産のそれを上回れば、その分輸出余力が減少することになる。

  このようにアジア大洋州地域の石油消費が伸びる一方、中東など産油国の輸出余力が減少している事実は、将来の石油需給問題に影を投げかけていると言えよう。

(4) アジアの三大石油消費国(日、中、印)の消費量の推移

 上記に述べたとおりアジア大洋州の石油消費量は過去半世紀近く大幅に増加し続けている。1965年に320万B/Dであった同地域の消費量は5年後の1970年には倍以上の653万B/Dに達し、更に10年後の1980年には1千万B/Dを突破した。そして2000年には2,100万B/Dを超え、2008年は2,534万B/Dとなり、40年間で消費量は8倍に増えている。

  このような増加をもたらした主な要因は中国とインドの二カ国にある。1965年の中国(香港を含む)とインドの石油消費量はそれぞれ26万B/D、25万B/Dであり、アジア大洋州の全消費量に占める割合も2カ国合わせて16%に過ぎなかった。しかし1990年以降は特に中国の消費量が急激に増加し、2002年には遂に日本も追い抜き、2008年の中国の石油消費量は829万B/D、地域全体の3分の1を占めるに至っている。インドも2008年の消費量は288万B/Dであり、1965年当時の10倍以上に膨れている。

  これに対して日本は1965年は地域の全消費量の半分以上(164万B/D、51%)を占め、量的にも1980年には3倍弱の474万B/Dまで増加したが、その後1995年以降は逓減しており2008年の消費量は485万B/D、地域全体に占める割合も20%弱にとどまっている。日本が省エネ技術により安定成長を続けたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げた結果であると言えよう。

(グラフ2-D-2-96c Oil Consumption in Japan China & India, 1965-2008「日本、中国、インドの石油消費量の推移」 http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D%20Energy.html  参照)

(石油篇第3回完)

(これまでの内容)

石油篇(2):世界の石油生産量石油篇

(1):世界の石油の埋蔵量

以上本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行

〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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