(英語版)
(アラビア語版)
2023年3月
Part III:キメラ(Chimera)
77. NEOギャラクシーの地球上陸(3)
エリートは数カ月前にイラン核施設爆撃の任務を終えて職場に戻っていた。しかし戻ってきたのは彼一人だけで、編隊を組んで出撃した彼の同僚二人、マフィアとアブダッラーはその中にいなかった。核施設攻撃でイスラエル空軍は3機の戦闘機に加え、補給機1機を失っていた。そしてマフィアとアブダッラーに加え補給機の乗員全員が帰らぬ人となった。さらにはアブダッラーが核弾頭を積んだままイラン上空の成層圏で核爆発を引き起こした。
軍幹部と政府は一連の出来事の善後策を緊急協議した。イラン核施設の爆発は事実であり隠しようがない。しかしその他の出来事についてイスラエル政府は一切無関係であると強弁することとし、対外的に声明を発表した。
そもそもイスラエルは自国が核弾頭を保有しているともいないとも明確にしていない。そうである以上、核弾頭を積載した自国の戦闘機がイラン上空で核爆発を起こしたなどと言えるはずがない。イスラエル政府は対外的に否定も肯定もせず、ノーコメントを押し通した。そして軍の内部ではイラン核施設事件を話題にしないよう厳重なかん口令を引いた。
エリートは任務を終え祖国に戻れば英雄になれると固く信じていた。しかし同僚の二人のパイロットは無事生還できなかった。それどころか二人がどのようにして亡くなったのかも教えてもらえなかった。
しかし彼自身自分だけが米国の原子力空母「ハリー・S・トルーマン」に救助された時から何となく周囲が自分に対してよそよそしいことが気になりだした。原子力空母の艦上では水夫たちの畏敬するような目に晒された。しかし彼に直接称賛の言葉をかける者はいなかった。すべての者が彼を腫れ物に触るように取り扱った。
(続く)
荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html
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