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(目次)
第1章 民族主義と社会主義のうねり(10)
026.イスラエル独立(その2):ユダヤ人とは(2/3)
紀元100年前後にはローマ帝国に対して度々反乱した結果、135年にハドリアヌス帝によって徹底的に弾圧され、ユダヤ人はエルサレムに住むことを禁止された。この時から長いユダヤ人の「離散(ディアスポラ)」が始まり、彼らはヨーロッパ各地に移り住んだのである。
キリスト教が深く根を下ろし、白人が定住するヨーロッパ各地で、固有の宗教を信奉するセム系のユダヤ人が蔑視され迫害されたことは言うまでもない。キリストを裏切ったユダの汚名がいつまでもユダヤ人について回った。キリスト教徒たちはユダヤ人を「ゲットー(居住区)」に押しこめ、自分たちが忌避する仕事を押し付けた。
そのような職業の一つが金貸し業である。中世キリスト教社会では金融業は汚らわしい職業とみなされていた。人間を金に縛り付け強欲が支配する金融業は宗教の持つ清廉さと相容れないためであろう。実は金融業を忌避するのはキリスト教に限ったことではなく、イスラム教ではさらに厳格に解釈されており、現代でもイスラム社会では金利は「ハラーム(忌避すべきもの)」とされ金利を取ることは禁止されている。当時の金貸し業がユダヤ人の専売特許であったことはシェークスピアの戯曲「ヴェニスの商人」を見てもよくわかる。当時のヨーロッパではシェークスピアのような文化人ですらユダヤ人を毛嫌いしていた。このようなステレオタイプなユダヤ人観は20世紀前半まで残り、その最大の悲劇こそナチスドイツによるホロコーストだったと言えよう。
(続く)
荒葉 一也
E-mail: Arehakazuya1@gmail.com
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