石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:天然ガス篇13 消費量(6)

2014-08-15 | その他

(いよいよ天然ガスの輸出国になる米国!)
(5-2)主要5カ国の天然ガス自給率
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/2-3-G05.pdf 参照)
 上記で取り上げた5カ国を自給率[(生産量-消費量)/消費量]で見ると2004年ではカナダが193%、ロシアは147%であり、英国、中国がそれぞれ100%と105%、そしてインドと米国は100%を割り92%と83%であった。つまり2004年の時点ではカナダは消費量の2倍以上、ロシアは1.5倍の生産量があり大きな輸出余力を持っていた。英国と中国は100%の自給体制を有し、インドは消費量の1割、米国は2割を輸入に依存していたことになる。

 ロシアの自給率はその後もコンスタントに140%台を維持しており安定的な輸出体制を組んでいる。カナダの自給率は2007年以降急激に低下し、2013年にはロシアとほぼ同じ150%に低下している。しかしこれはカナダの天然ガスの生産能力が減退したからではなく前項の需給ギャップで述べたとおり米国におけるシェールガス生産の急増によりカナダにとって唯一の輸出国である米国向けの輸出が急減したからに他ならない。カナダはLNG基地を建設し日本など米国以外への輸出を模索しており、いずれ輸出が上向くことは間違いないと言えよう。

 英国は2004年から2006年までは自給率が若干上昇する傾向を示したが、それ以降は年々低下2008年には100%を切り純輸入国に転落、インドも同様の道をたどっている。2013年の自給率は英国78%、インド65%であり、英国は2割強、インドの場合は3分の1を輸入に頼っているのが現状である。中国の状況はさらに厳しく、2007年に自給率100%を切るとその後は急速に悪化、2013年の自給率は72%まで低下、消費量の3割を輸入に依存していることになる。

 これら英国、インド、中国に比べ米国の自給率の改善には目覚ましいものがある。米国の2004年の自給率は83%であり4カ国の中では最も低かったが、その後年々改善し、2006年にはインドを、また2010年には英国と中国を追い抜いている。2011年以降米国の自給率は9割を超えており、2013年は93%である。今や米国は必要な天然ガスの内、輸入(カナダからの)はわずか1割未満にとどまっているのである。この趨勢が続けば近い将来米国は天然ガスの完全自給体制を整え、さらには輸出国になるであろう。米国政府は既に天然ガス(LNG)の輸出を承認、メキシコ湾沿岸で複数のLNG輸出基地が建設中であり、数年後に日本向けの出荷が開始される予定である。

(天然ガス篇消費量完)


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