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石油と中東

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現地記事転載:「元拘留者が語るシリア・アサド政権下での恐怖の拷問」(下)

2025-01-14 | 現地紙記事転載
(原題) Long silenced by fear, Syrians now speak about rampant torture under Assad
2025/1/7 Arab News (By AP通信)

 

増え続ける証拠は裁判で利用
拷問はアサド政権の終わりまで続いた。
ラシャ・バラカット(34歳)は、彼女と妹は3月にダマスカス郊外の町サクバの自宅で拘留されたと語った。治安支部の中で、彼女は数時間前に逮捕され尋問を受けていた夫の前を通された。彼女は、夫が床にひざまずき顔が青ざめていたと語った。それが夫を最後に見た短い時間だった。夫は拘留中に死亡した。

彼女自身の数時間に及ぶ尋問中、治安部隊員は、自白しなければ5歳と7歳の息子を連れてくると脅した。彼女は殴られ、女性の治安部隊員が彼女の服を脱がせて冷水をかけ、彼女は2時間裸で震えていた。彼女は8日間隔離され、近くで殴打の音が聞こえた。

最終的に彼女はダマスカスの中央刑務所であるアドラに移送され、反政府グループを支援したとして裁判にかけられ、5年の刑を宣告されたが、彼らの言うところの罪状はでっち上げだった。彼女は12月に反乱軍がアドラに侵入し、自由の身だと告げられるまでそこに留まった。戦闘員らがダマスカスへの行進中に刑務所を開けたため、推定3万人の囚人が釈放された。バラカットは子供たちに再会できて嬉しいが「私は精神的に打ちのめされています…何かが欠けています。これまで通りの生活を続けるのは難しいです。」と語っている。

今後、シリアの裁判所であれ国際裁判所であれ、いつかアサド政権の役人を訴追するために利用できるかもしれない証拠の収集という途方もない仕事が待っている。何十万もの文書が、旧拘留施設に散らばったまま、その多くは機密扱いで、通常は地下の保管室に保管されている。AP通信が見た文書の中には、軍将校同士の電話会話の記録、活動家に関する諜報ファイル、拘留中に殺害された数百人の囚人のリストなどがあった。 

10年間投獄されていたシャディ・ハルーンは、トルコに亡命し、アサド政権の刑務所構造を解明し、元収容者の体験を記録してきた。アサド政権崩壊後、同氏は急遽シリアに戻り、拘留施設を視察した。同氏によると、これらの文書は殺害の背後にある官僚機構を示している。「彼らは自分たちが何をしているのか分かっている。組織的だ。」

民間防衛隊員らは、数万人が埋葬されているとみられる集団墓地の捜索を行っている。ダマスカス周辺では少なくとも10カ所が特定されており、そのほとんどは住民の報告によるもので、国内の他の場所でも5カ所が特定されている。当局は、まだ公開する準備はできていないとしている。

国連機関は、シリアの新暫定政権にすべての資料の収集、整理、分析の支援を申し出ている。2011年以来、国連は証拠を収集し、アサド政権の関係者に対する200件以上の刑事事件の捜査を支援している。
国連機関のロバート・プティ局長は、この任務は膨大で、1つの組織だけではできないと述べた。優先課題は、この残虐行為の首謀者を特定することである。

12年前に父親が拘束され殺害されたシリア人ジャーナリストのワファ・ムスタファ氏は、当局は行方不明者が死亡したと単純に宣言することはできないと語っている。
「証拠も捜索も作業もなしに、家族に何が起こったのかを告げられる人はいない。」

多くの人が今すぐに答えを求めている。

以上
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(SF小説) ナクバの東(56)

2025-01-14 | 荒葉一也SF小説

Part I:「イスラエル、イラン核施設を空爆す」(53)

第20章 さまよう3羽の小鳥(1)「エリート」の場合(2/3)


その親鳥の出迎えがないまま3機は当てもなくペルシャ湾上空を南下した。残された燃料はあと1時間程度しかなく、ホルムズ海峡を越えることもできないことは確かだ。このままではペルシャ湾に不時着する他なく、墜落前にパラシュートで脱出したとしても、誰が彼らを拾い上げてくれるのだろう。左岸はさきほど空爆したばかりのイラン、右岸はサウジアラビア、バハレーン、カタール、UAEなどイスラエルの仇敵のアラブ諸国である。イランの巡視船或いは漁船に助けられたなら目も当てられない。かと言ってアラブ諸国の哨戒艇か漁船に助けられたとしても晒し者にされることは間違いない。いずれにしてもパイロット達にとっては勝利の凱旋どころではなさそうだ。

不安に駆られたパイロット達の反応は三者三様であった。「エリート」は内心の動揺を抑えリーダーとして冷静沈着さを装った。彼は僚機の「マフィア」と「アブダラー」に落ち着くように諭し、指令部が何らかの救出作戦を講じるに違いない、と元気づけた。確信があった訳ではない。しかしこれまでもイスラエル軍はどのような困難な状況でも決して仲間を見殺しにすることはなかった。司令部は必ずや自分たちを救出してくれるはずだと「エリート」は信じたかった。

(続く)


荒葉一也
(From an ordinary citizen in the cloud)
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