石油と中東

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五大国際石油企業2017年7-9月期決算速報(付JXTGグループ業績)(3)

2017-11-21 | 中東諸国の動向

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

 http://mylibrary.maeda1.jp/0426OilMajor2017-3rdQtr.pdf

 

2017.11.21

前田 高行

 

1.五社の7-9月期業績比較 (続き)

(3)売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)

 売上高利益率はTotalが6.3%と最も高く、ExxonMobil 6.0%、Shell 5.7%、Chevron 5.4%と続き、最も低いのはBPの2.9%である。前年同期はChevronが5.2%であり、その他の4社はExxonMobilの4.5%はじめいずれも5%以下であった。

 

 JXTGの売上高利益率は前期の0.9%を大幅に上回り3.9%であった。これはBPよりは高いが、Total、ExxonMobil、Shell、Chevronに比べるとかなりの格差があると言えよう。

 

(4)上流部門と下流部門の利益

(a)上流部門

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-56.pdf参照)

 利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)に分けて比較すると、まず上流部門では前年同期に比べるとShellがマイナスからプラスに転じたのを始め、ExxonMobil及びTotalも利益が大幅に伸びている。この1年の間に原油価格が改善したこと、及び各社が上流部門の投資ポートフォリオを見直したことにより各社とも上流部門の損益が上向き傾向にあると言えよう。

 

 5社の中で今期の上流部門の利益が最も多かったのはExxonMobilの16億ドル(前年同期比2.5倍)でこれに次ぐのがTotal 14億ドル(同64%増)、BP12億ドル(同4%増)である。Shell及びChevronは5億ドル前後で並んでいる。Shellは前年同期の4億ドルの赤字から6億ドルの黒字に転換している。

 

 JXTGの上流部門の利益は48億円であり、ドルに換算すると43百万ドルとなる。これは五大国際石油企業の1割以下の水準である。因みに同社の4-9月の石油・天然ガス合計販売量は11.3万B/D(石油5万B/D、石油換算天然ガス6.3万B/D)であり、後述する国際石油企業の生産量と雲泥の差がある。これが利益面でも大きな格差となっている。

(注)JXTGの決算説明資料では7-9月の四半期の販売量は記載されていない。

 

(b)下流部門

(図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-57.pdf参照)

 下流部門は今期も好調で全社が利益を計上している。利益額が最も大きいのはExxonMobilの26億ドルであり、次いでShellが24億ドル、BPも22億ドルの黒字を計上、Chevronは 18億ドル、Total 10億ドルである。前年同期比ではBPが2.2倍、Chevron1.7倍、Shell1.5倍等各社とも下流部門は安定した収益源となっている。下流部門は原油価格の上昇が原料のコストアップとなり上流部門とは正反対の効果をもたらすことになるが、製品価格への転嫁、製油所の効率化・集約化など企業努力の結果が各社の下流部門の業績に反映しているようである。

 

 JXTGの下流部門の利益は1,132億円(10億ドル)であり、上流部門の利益(48億円、上記)に比べると同社が利益の大半を下流部門で捻出していることが解る。これを国際石油企業五社と比べると、JXTGは5社で最も低いTotalと同じ水準であり、ExxonMobilあるいはShellの2分の1以下である。これまで日本の石油産業は構造的な過剰設備と過当競争のため製品末端価格の利幅が小さく利益の出にくい体質であった。その対策としてJXTGは合併により設備の集約化と販売の効率化を図り、その結果下流部門で安定した収益を確保できる体制を整えつつある。

 

 なお冒頭(1-(2))の総合損益は各社によって石油化学品部門あるいはその他の損益を含むため上・下流部門の利益の合計額とは一致しないケースがある。

 

(c)上流部門と下流部門の比較

 各社の上流部門と下流部門の損益を比較すると、ExxonMobil、Shell、BP及びChevronの4社は下流部門が上流部門を上回り、Totalのみ上流部門の利益が下流部門のそれを上回っている。かつて石油価格が高かった時代は国際石油企業は利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという収益構図であった。その後昨年前半までの約2年間は原油価格が大幅に下落したため収益構造が逆転、上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化した。しかし、昨年後半以降は原油・天然ガス価格が持ち直しており、各社とも上流部門と下流部門の収益が変動しつつあり、それが今期の決算に表れたと言えよう。

 

(続く)

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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