goo blog サービス終了のお知らせ 

石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(ニュース解説)OPECはいつまで無風でいられるか?-第163回総会を終えて

2013-06-03 | OPECの動向

 5月31日、OPECの第163回通常総会が開かれ、大方の予想通り生産枠3千万B/Dを維持することで加盟国が合意した。サウジアラビアのナイミ石油相は前日の囲み取材で「現在の100ドルの価格水準に満足している」とコメント、クウェイト、UAEなど他のOPEC穏健派諸国も異口同音の発言であった。一方、強硬派のベネズエラは、北海ブレント原油が3月の110ドル台から100ドル前半に下落していることから価格アップのための生産目標削減を匂わせていたが、チャベス大統領の死去直後であり強気の発言は影をひそめ、また同じく強硬派のイランは経済制裁で石油輸出がままならず数量削減、価格アップなどと言いだせる訳もなく結局現行生産枠維持に反論することなく会議は短時間で終了した。

 3千万B/Dは2011年12月総会で決定されたものであり、このままの状態が続けば次回12月総会まで2年間にわたり生産枠が変更されないことになる。OPECがこのように長期間にわたり生産量を調整しないことはこれまでに殆ど例のないことである。100ドルと言う原油価格は過去の例からみてもかなり高い水準であり、世界景気の足を引っ張っている一因であることは間違いない。これまで価格が高騰すると米国はIEAを通じてOPECに価格引き下げの圧力をかけてきたが、その米国も今のところ120ドルを超える価格帯には懸念を示すものの100ドルの妥当性については論評していない。そこにあるのは現在の価格帯がシェールオイルの商業生産に極めて好都合だからであろう。このように現在のOPECは内外ともに無風状態が続く「幸福な時代」である。

 しかしOPECは今も組織の内外にいくつかの問題を抱えており、いつまで無風状態でいられるかは定かでない。対外的な問題は何と言っても米国でシェールオイル及びシェールガスの生産が急増していることであろう。米国のエネルギー事情は様変わりしつつあり同国は近い将来エネルギーの完全自給国になるとすら言われている。その影響はOPEC産油国にも表れており、今年2月のベネズエラの対米石油輸出は前年同月比35%も減少、またシェールオイルと競合するナイジェリアやアンゴラなどの軽質原油は対米輸出の道を閉ざされインド、中国などアジア市場になだれ込んでいる。シェールガスも石油市況と無縁ではない。米国内ではシェールガスの増産が石炭需要を押し下げ、余った石炭が欧州に流れる結果、欧州での石油需要が減少すると言った連鎖反応も起こっている。ナイミ石油相もバドリOPEC事務局長もシェールオイルの生産急増に対して務めて冷静な素振りを見せてきたが、世界的に石油がだぶつき、OPECがその影響を最も敏感に受けている。

 OPECはこのような外的な問題だけではなく内部にもいくつかの問題を抱えている。一つは事務局長選出問題である。現在のバドリ事務局長(リビア出身)は昨年12月に交代の予定であったが、イラン、イラク、サウジアラビア3カ国の後任争いが決着せず任期が1年間延長されている 。今回の総会で候補者が絞り込まれる予定であったが、3カ国の対立が解けず議題にもならないまま問題は先送りされた。年末までに決着がつくかどうかは予断を許さない。

 これ以上に大きな問題はイラクの扱いである。イラクはサダム政権時代末期に生産量が急減、1998年以降はOPEC生産枠の対象外となったままである。しかし近年同国の石油生産量は急速に回復し、過去最大の生産量を誇った第二次オイルショック前の350万B/Dを超えるのも時間の問題とされている。今やイラクはサウジアラビアに次ぐOPEC第二の石油生産国である。圧倒的な生産量と価格を左右できる生産余力でOPECを意のままに扱ってきたサウジアラビアにイラクと言う内なる強敵が現れたのである。イラクをいつどのように生産枠に取り込むのか、OPECは早急な決断を迫られている。

(完)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする