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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

三大国際石油企業2012年度業績速報シリーズ(2)

2013-03-05 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0256ExxoMobil2012.pdf

 

I.ExxonMobilの業績(下)
 
2.2008~2012年の業績推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-93bExxon.pdf 参照)
2008年から2012年までの過去5年間の売上、利益、設備投資及び生産量は以下の通りであった。

(1) 売上高
 2008年に4,774億ドルであったExxonMobilの売上は2009年には3,106億ドルに急減したが、その後は再び上昇に転じ2011年には過去最高の4,864億ドルに達し2012年もほぼ横ばいの4,823億ドルであった。

 この5年間の売上の増減は石油価格の急騰及び急落が主な理由であり、生産量の増減とはほぼ無関係と言える。すなわち下記(4)の生産量の推移でも述べるとおり2008年から2009年にかけては生産量が横這いであるにもかかわらず売上高が急減しているが、これは2008年央に原油価格が史上最高の147ドルに達し同年の年間平均価格も97ドル(Brent原油)だったのに対して、2009年はその反動で原油価格が暴落(同年間平均価格62ドル)したためである。

 そして2010年及び2011年と2年連続して価格が上昇したことにより、売上高は2008年の水準に戻ったのである。2012年は前年比で生産量が落ちたにもかかわらず、価格が堅調に推移したため売上高は2011年の水準を維持した。

(2) 利益
 各年の利益額は2008年452億ドル、2009年193億ドル、2010年305億ドル、2011年411億ドル、2012年449億ドルであった。2009年に一旦落ち込んだ利益はその後順調に増え続け、2012年は5年前の水準に戻っている。売上高と利益の対前年比増減を比較すると2009年の売り上げは対前年比34.9%の減少であったが、利益はそれ以上の57.4%減となっている。これに対して2011年には売上高が対前年比26.9%増加したのに比べ利益は34.8%増となっている。売上が減少した場合は利益がそれ以上の割合で減少し、逆に売上が増加した場合、利益はそれ以上に伸びている。価格変動に対するセンシティビティ(感度)は利益の方が売上よりも敏感であると言える。

 2012年の対前年比の増減は売上マイナス0.5%、利益プラス9.3%、生産量マイナス5.9%となっており、生産量の大幅な落ち込みに対して売上は微減にとどまり、利益はむしろ大幅に増加している。利益の増加は下流部門が好調であったことが主な要因である(上記1(2)参照)。ExxonMobil社は原油価格や生産量に左右されない強靭な体質に変化しつつあるように見受けられる。

(3) 設備・探鉱投資額
 設備・探鉱の投資額は売上或いは利益のぶれとは関係なく毎年増加の傾向にある。即ち2008年261億ドル、2009年271億ドル、2010年322億ドル、2011年368億ドル、2012年398億ドルの投資が行われている。

 5年間を通じて投資の9割前後は上流部門の探鉱開発投資であり、2012年は上流部門90%、下流部門6%、化学部門4%であった。石油及び天然ガスは再生不可能な資源であ既存油田(或いはガス田)の生産に伴い残存埋蔵量が漸減する宿命を負っている。従って企業としては新規鉱区の獲得とその探鉱開発、既存油田の回収率向上、或いは同業他社の買収などにより常に自社の資源量を維持し続けなければならない。新規鉱区の探鉱開発はリスクも高く、投資のリードタイム(回収期間)が長いため、長期的視野に立った投資が必要である。ExxonMobilの投資が毎年増加しているのはこのような理由のためと考えられるが、見方を変えれば同社はそれが可能な強い財務体質の企業であると言えよう。

(4) 生産量
 石油及び天然ガスを合計した生産量は2008年392万B/D、2009年393万B/Dといずれも4百万B/Dの大台を割っている。しかし2010年以降2012年までの3年間は445万B/D、451万B/D、2012年424万B/Dと4百万台を維持している。

 石油と天然ガスそれぞれについて見ると、2008年から2012年までの過去5年間の石油生産量は241万 B/D → 239万 B/D → 242万 B/D → 231万 B/D → 219万 B/Dであり、2010年以降急激に減少している。
一方天然ガスは2008年の生産量91億立法フィート/日(石油換算152万B/D)が翌2009年は93億立法フィート/日(同155万B/D)となり、2010年には一挙に121億立法フィート/日(同203万B/D)に増加、その後も2011年132億立法フィート/日(同219万B/D)、2012年123億立法フィート/日(同205万B/D)と石油換算で2百万B/D台を維持している。ExxonMobilは石油の落ち込みを天然ガスで補っていると言える。これは米国内のシェール・ガス権益取得などのM&A戦略の成果が現れたものであろう。

(ExxonMobil編 完)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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