(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0238BpGasTrade2012.pdf
(ロシア、ノルウェー、カナダが三大輸出国。中国向け輸出でトルクメニスタンが急浮上!)
6.パイプラインによる天然ガス貿易(2006年~2011年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-3-G01.pdf 参照)
パイプラインによる天然ガスの貿易量を2006年から2011年までの6年間についてみると2006年は5,371億㎥であった。貿易量はその後毎年増加し2009年には6千億㎥を超えて2011年には2006年の1.3倍の6,946億㎥に達し、この間の年間平均成長率は5.3%であった。同じ期間中のLNG貿易の1.6倍、9.7%に比べると低いもののパイプラインによる天然ガス貿易は着実に成長していると言えよう。
輸出国で見るとロシアが6年間を通じてトップであり世界に占めるシェアは2006年が28%、2011年は30%と若干シェアが上昇している。カナダは2006年にはロシアに次いで世界第2位の輸出国であり、毎年1千億㎥前後を米国に輸出していたが、2009年以降米国向け輸出量が急減し、輸出国2位の座をノルウェーに譲り、2011年の対米輸出量は880億㎥に減少している。これは米国でシェールガスの生産が急増したためである。
ロシア、ノルウェー、カナダに加えオランダ、アルジェリア等が伝統的な輸出国であるが、これに対して最近急速に輸出を伸ばしているのがトルクメニスタンとカタールである。トルクメニスタンは中国向けパイプラインがフル稼働したことにより輸出が急増している。カタールは世界最大のLNG輸出国であるが、UAE、オマーンとの間に「ドルフィン・パイプライン」が完成、両国向けの輸出が始まっている。
(世界のパイプライン貿易の4分の1を支配するロシア!)
7.国別の天然ガスNET輸出量(2011年)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-3-T01.pdf 参照)
2011年のパイプラインによる天然ガス輸出(NET)ではロシアが1,770億㎥で2位ノルウェー(928億㎥)の2倍近い輸出量を誇っている。これは全世界の輸出量の4分の1を占め、東欧を経由したパイプラインにより西欧諸国に供給されている。なおこのことが2006年のロシアとウクライナの天然ガス価格を巡る紛争のように西欧諸国にとってエネルギー安全保障上の問題となっている 。
ロシア、ノルウェーに次ぐ輸出国はカナダ(614億㎥)であり、オランダ、トルクメニスタン及びアルジェリアが350億㎥前後で続いている。輸出量7位から10位はカタール、ボリビア、ウズベキスタン、インドネシアである。
上記各国の他ミャンマー、アゼルバイジャン、モザンビークなどを含め全世界では20カ国がパイプラインによる天然ガス輸出を行っている。なおここでの輸出量は他国からの輸入量を差し引いたNETの輸出量である。例えばカナダと米国(次項の輸入国参照)はパイプラインを通じて相互に天然ガスを融通しあっており、カナダは米国向けに880億㎥を輸出する一方、米国から266億㎥を輸入しており差し引きNET輸出量は614億㎥である(上記6の貿易量とは異なる)。
(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)
8.国別の天然ガス輸入量(2011年)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/4-3-T02.pdf 参照)
2011年にパイプラインによる天然ガスの輸入(NET)が最も多かったのはドイツで輸入量は840億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(608億㎥)、米国(474億㎥)、ウクライナ(405億㎥)、トルコ(356億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはアルジェリア及びロシアから輸入している。
ウクライナは全量をロシアからの輸入に依存しており、上記に触れた2006年のロシアとの紛争に見られる通り天然ガス問題はウクライナのアキレス腱となっている。この他天然ガスの輸入国は合わせて20カ国に達する(上記7で述べたと同様、輸入と輸出の差が輸入超過となっている国の数)。
(天然ガス貿易篇 完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp