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石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(6)

2009-08-30 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)本シリーズはHP「中東と石油」で一括全文をご覧いただけます。

(補) OPEC加盟国の石油収入と経常収支

 本シリーズの最後にOPEC加盟国の石油収入と経常収支を取り上げます。これらはOPEC統計に示されたものであり、BP統計との比較を目的とした本シリーズとは色合いが違いますが、ここ数年で暴騰した原油価格が、OPEC加盟国の石油収入と経常収支を如何に大きく変動させたかを理解していただくためのものです。なお、石油価格については、図表「原油価格の推移(1976~2008年)」(http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2D-2-97SpotCrudePrices.gif)及びBPエネルギー統計2009年版解説シリーズ:石油篇(5)原油価格」(http://www.k3.dion.ne.jp/~maedat/B13BP2009_oil_.pdf)をご参照ください。

(1)石油収入(原油輸出金額)

 OPEC加盟国(13カ国)の2008年の石油収入合計額は史上初めて1兆ドルを超えた。前年比2,500億ドル、35%の大幅な増加であった。これはWTI原油価格が同年7月に147ドル(1バレル当り)の最高値を記録し、その後年末には30ドル台にまで急落したものの、年間平均価格が100ドル強であったことが最も大きな要因である。因みにOPEC原油の年間平均バスケット価格も2008年は94.45ドルであり、前年の69.08ドルに比べ37%アップしており、上記石油収入の増加は価格にスライドしたものであることがわかる。

 OPECの中で最大の石油収入を誇っているのはサウジアラビアであり、同国の2008年の石油収入は2,830億ドルでOPEC全体の3割弱を占めている。サウジアラビアに次いで二番目に石油収入が多かったのはUAE(1,030億ドル)で、OPECの中で石油収入1千億ドルを超えたのはこの2カ国である。3位以下はイラン890億ドル、クウェイト840億ドル、ベネズエラ780億ドル、ナイジェリア750億ドル、アンゴラ640億ドル、イラク580億ドル、リビア550億ドルと続き、OPEC13カ国の中で石油収入が最も小さかったのはエクアドル(120億ドル)である。サウジアラビアの石油収入はOPEC下位グループ7ヶ国(アンゴラ、イラク、リビア、アルジェリア、カタール、インドネシア及びエクアドル)の合計額(2,950億ドル)に匹敵するものである。

 上図は1988~2008年の石油収入の推移を見たものである(拡大図はhttp://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-E-2-90OpecValueOfOilExpor.gif参照)。1990年代は石油価格が低迷したため、OPEC加盟国の石油収入は年間1千億ドル台を低迷していたが、2000年に2千億ドル台を突破し、さらに2004年以降は急激に膨らんだことがわかる。2004年に3,800億ドルであったものが、2005年5,600億ドル、2006年6,600億ドル、2007年7,500億ドルと急上昇し、2008年には遂に1兆ドルを突破している。その間のOPECバスケット価格は、36.05ドル(04年)→50.64ドル(05年)→61.08ドル(06年)→69.08ドル(07年)→94.45ドル(08年)となっており、石油収入は石油価格と見事に比例しているのである。

(2)経常収支

 OPEC加盟国の多くは歳入の殆どを石油収入に頼っており、従って経常収支は石油価格に大きく左右される。これは昨年のように石油価格が史上まれに見る高水準を維持した場合、大きなプラス要因となる。2008年はOPEC加盟国の全てが黒字を計上しており、13カ国の経常黒字合計額は4,700億ドルに達している。黒字幅が最も大きかったのはサウジアラビアの1,420億ドルである。同国だけで全体の3割を占めており、また2位のクウェイトの2倍以上の黒字額であった。サウジアラビアに続くクウェイトの黒字額は640億ドル、以下ベネズエラ(440億ドル)、UAE(430億ドル)、アルジェリア(371億ドル)、リビア(365億ドル)、カタール(322億ドル)と続いている。

 上記(1)の石油収入の順位と比べアルジェリア、カタールの順位が高くなっているのは、両国には石油以外の天然ガスの収入があるためである。またイランやナイジェリアは石油収入に比べ経常収支の順位が低く、一方UAE及びクウェイトは逆に経常収支の順位が高い。これは前者の国々は人口が多いためそれに比例して経常支出も大きく、これに対して人口の少ない後者の国々は支出がすくないことが理由である。

 経常収支の経年変化を見ると(詳細は図「OPEC13カ国の経常収支(1988~2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-B-3-90OpecCurrentAccountB.gif参照)、1990年代はOPEC加盟国の多くが経常収支は赤字であった。特に湾岸戦争が勃発した1991年は、クウェイトを始めサウジアラビア、イランなどアラビア(ペルシャ)湾沿岸諸国では大幅な赤字を余儀なくされている。また1998年には原油価格が10ドル台前半まで落ち込んだため、このときはUAEとインドネシアを除く全ての加盟国が経常赤字を記録している。しかし2002年以降、各国の経常収支は急速に改善し、同年のOPEC13カ国の経常黒字合計額440億ドルは翌年には850億ドルに倍増、その後も2004年1,330億ドル、2005年2,630億ドル、2006年3,360億ドルと驚異的な伸びを示し、2002年から2006年までのわずか5年間で経常黒字幅は8倍近くになったのである。そして上述したとおり昨年は4,700億ドルに達し、2002年当時の10倍以上になっている。

(完)

(これまでの内容)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(1)はじめに、

埋蔵量 OPECとBPの石油統計を比較すれば------(2)埋蔵量(続き)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(3)生産量

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(4)輸出量

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行

〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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OPECとBPの石油統計を比較すれば------(5)

2009-08-30 | 今週のエネルギー関連新聞発表

(注)本シリーズはHP「中東と石油」で一括全文をご覧いただけます。

3. OPEC諸国の原油輸出量 (続き)

(3)生産シェアか輸出シェアか 

 世界の石油供給問題が提起され、そこでのOPECの位置づけが議論されるときに最初に取り上げられるのは生産量である。OPEC自身も総会における生産割り当て数量(かつてはProduction Quotaと呼ばれ、最近ではProduction Allocationと言われている)という形で生産目標を示している。

  しかし生産シェアについてのみ議論することは問題を曖昧にする恐れがある。生産シェアだけで言うならば、世界1位と2位はサウジアラビアとロシアであるが、実は米国3位、中国5位である(4位はイラン)。言うまでもなく米国及び中国は世界1位と2位の石油消費国であり、石油の純輸入国である(「BPエネルギー統計2009年版解説シリーズ:石油篇」http://www.k3.dion.ne.jp/~maedat/B13BP2009_oil_.pdf参照)。また昨年までOPECの加盟国であったインドネシアの原油生産量は86万B/D(OPEC統計。但しBP統計では100万B/D)で、内輸出量は29万B/Dとされている。しかし同じOPEC統計によれば同国は26万B/Dの原油を輸入しており、同国の純輸出量は3万B/Dに過ぎない(なお同国はガソリンなど石油製品も大量に輸入しており、石油に関しては2004年頃からすでに輸出国から輸入国に転落している)。

  このように生産国によっても状況が異なるため、世界の石油の供給に関して生産量の多寡のみで論じることは必ずしも妥当とは言えない。そもそもOPECは「石油輸出国機構」であり、文字通り加盟国の輸出力をベースとしたカルテルなのである。従って世界の石油貿易に占める輸出のシェアこそが真に消費国に対抗できる力の源泉と言える。その意味でOPECはその生産シェア(OPEC統計:45.9%、BP統計44.9%、前回参照)よりも輸出シェア(60%、OPEC統計)がもっと注目されて良いのではないだろうか。

(4)OPECとその加盟国の輸出比率

 上図は1988年から2008年までのOPECとその加盟国の生産量に占める輸出比率の推移である(拡大図は「OPEC各国の輸出比率(1988~2008年)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/2-D-2-99cOilExportShareby-C.gif参照)。

  OPEC13カ国全体の輸出比率は1989年以降コンスタントに70%台を維持しており、その比率が最も高かったのは2007年の76.3%であり、昨年も73.1%を記録している。つまりOPEC全体としては過去20年近く生産量の7割以上を輸出に回してきたことがわかる。加盟国の中にはイラクのように90年代のサダムフセイン政権時代に禁輸制裁を受けて輸出比率が10%前後にまで落ち込んだ国もあるが、OPEC全体として高い輸出比率を維持したのは、OPEC最大の輸出国サウジアラビアによるところが大きいと言える。サウジアラビアは1980年代後半には自ら率先して生産を削減しており、輸出比率も60~70%台に低迷していたが、90年代には同国は輸出比率をあげイラクの輸出の減少をカバーし、現在までは80%近い輸出比率を続けているのである。

 これに対してUAEは1990年前後にはほぼ全量を輸出していたが現在では輸出比率は90%になっている。さらにイランの場合は90年代を通じて70%強であった輸出比率がここ数年大幅に低下し、2008年には60.1%となっている。同国の輸出量そのものは最も多い1996年で263万B/D、2008年は244万B/Dでさほど大きな減少は見られず、輸出比率の落ち込みは石油の増産が国内消費に食われていることを示している。

 このような点を考慮すると、OPECが現在の輸出シェア70%を維持するか、あるいは今後シェアを伸ばすかどうかは予断を許さない。加盟各国の国内需要は今後当然増加するであろうし、その反動として輸出余力が無くなり、極端な場合インドネシアのように輸入国に転落することも考えられる。輸出シェアを維持するためにはOPEC各国が探鉱開発投資を促進して生産量を増やさなければならないが、探鉱投資の拡大は石油価格次第と言えよう。

(「OPEC諸国の原油輸出量」終わり)

(これまでの内容)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(1)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(2)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(3)

OPECとBPの石油統計を比較すれば------(4)

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

前田 高行

〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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