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令和版・海外俳優列伝(31)ウィル・スミス、前半

2022-09-29 00:10:00 | コラム
68年9月25日生まれ・53歳。
アメリカ出身。

でに朗やパチーノ、ジャック・ニコルソンは「キャリアの濃さ」を理由に二夜連続構成。
人気者のスミスだって「そこそこのキャリア」だが、彼らに比べたら濃ゆくはない。
ないにも関わらず二夜連続にする理由はただひとつ―今年の春に起こった、あの騒動について書きたいから。

というわけで。
第一夜は、映画キャリアについて一切触れません!!


本年3月27日夜、第94回アカデミー賞が開催された。

プレゼンターのひとり、スタンダップコメディアンのクリス・ロック(スミスとは旧知の仲)は、スミスの妻ジェイダ・ピンケットの丸刈りスタイルについて言及、
アメリカンジョークの一種だが、
それに腹を立てたスミスがロックにつかつかと近寄り、いきなりビンタした、、、という騒動。



自分の見解を記す前に、その後の流れについて軽くおさらいしておく。

4月1日―「多くの人を傷つけ、アカデミーの信頼を裏切った。私はアカデミーから退会するとともに、今後のアカデミーの判断を受け入れる」とスミスが謝罪。

4月8日―協会は今後10年間、スミスの「授賞式への参加を禁止する」処分を決定、スミスもそれを受け入れたことを発表する。

ただし、この夜に受賞した主演賞は剥奪しない、、、とのこと。

さらにいえば、ロックへの処分は「なし」。
「えっ、一切なしなの?」と疑問を抱いた多くは日本人で、「そりゃ当然よ」と思っているのが大半の米国人である…という感じ。


さて自分の見解を。

自分が初めて米オスカー賞授賞式に触れたのは、87年度(第60回)だったと記憶する。
坂本教授が『ラストエンペラー』(87)で作曲賞を受賞した年。

その2年後、黒澤が名誉賞を受賞。

受賞作の嗜好だけでいえばカンヌ映画祭のほうが「はるかに」好みだが、「きらきら度」はオスカーのほうが何倍も輝いていた。

スターが最も輝ける場。
スクリーンの向こう側に居るスターたちが、ほんの少しだけちかく見える舞台―それが自分にとってのオスカーなんだと思う。

モハメド・アリが登場したり、
オバマさんがビデオ出演したり、エミネムが大ヒット曲を歌唱することはあっても、それで喝采を浴びることはあっても、それでも脇役に過ぎなくて。

この夜の主役は、あくまでもノミネートされているスターたちなんですよ。

アリなんかは、そのことをきっちり理解している。
スライのスピーチ中に突然現れ、「キミは盗作をした!」と散々からむが、スライが謝辞を送ると「そんなことはいいから、早いとこ進行を」と促しているでしょ?

※1分20秒くらいの動きを見よ!


コレなのよコレ、
ロックがどれだけ偉くとも、この夜の主役はスミスのはず。

まずここを前提として話を進めるべきなのです。


オスカーを取ったら人生が変わる。
すでにスーパースター、しかもグラミーだって取っているスミスにとっては「さほど大事なこと」ではないかもしれないけれどね。

それは置いておいて、だ。

今年「いちばんの夜」になるはずだったスミスにミソをつけたのはどっちだ、、、結局はこれに尽きると思う。

「気持ちは分かる、でも暴力はいかん」という声も多い。
「そういう思考は結局、戦争につながる」なんていう暴論まで。

果たしてそうかな。

じゃあさ。
『ダイハード』(88)のラストでマクレーンの妻ホリーがリポーターをぶん殴る場面で、あなたは顔をしかめたの?喝采を送ったのではないの?



というツッコミには、

「だから暴力の返しは、映画だけにしておこうと」

ほぉ~、と少しバカにしながら感心してみる。
そんな風に「あっちはあっち」「こっちはこっち」と分けて考えられるひとが羨ましい。

自分はそれが出来ない。
出来ないひとは、みんなスミスを批判することも出来ないんじゃないだべか。


米国に住む裕木奈江ちゃんは「ロックはビンケットの脱毛症を知らなかった説がある」とTwitter投稿、
さらにスタンダップコメディという表現への理解により、ロックへの批判は少数だったと結ぶ。

そういう背景は理解しているつもり、だが。
だがだがだが。

個人はそれでいいよ、しかし主催が10対0のジャッジを下すのはどうなのか。
しかも映画の祭典で起こった騒動で。
これでは「スターよりも、賞よりも、プレゼンターのほうが大事」といっているようなものではないか。

以前のコラムでも述べたとおり、原因がなければ結果は起こらない。
そのことを有耶無耶にしたままのアカデミー協会に、たいへん失望した。

これからだって、米オスカー授賞式は生放送で観ると思う。
映画史の第一級資料として無視するわけにはいかないので。

けれども。
もう以前のように楽しめないだろうな…と考える自分も居る。

受賞結果の予想も、それらを賭けの対象にして楽しむことも不可能になっちゃった。
だって「乗れない」のだもの!!


「後始末。」を完全に失敗している。
自分は、そう考えている。




…………………………………………

明日のコラムは・・・

『令和版・海外俳優列伝(31)ウィル・スミス、後半』
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4 コメント

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そうですね (夢見)
2022-09-29 06:28:47
ひたすら暴力をふるった側が悪いーという考え方には納得できません

どうにも日和った判定のような気もします
これがジョン・ウエィンあたりが力を持っていた時代だったらーどうなのか

私はこの件でウィル・スミスへの好感度上がりました

頑張れ!って思っています
返信する
まっき~さんこんばんわ~♪ (ゆみ)
2022-09-29 19:26:51
わたしも知ってか知らずかわかりませんが他人の弱いところを笑いにするなんてひどい話です。暴力はいけないけどその気持ちがわかります。わたしのはそうゆう勇気もないですがスミスさんを罰するなんて間違っていると思います。
返信する
夢見さん、 (まっき~)
2022-09-29 19:56:32
完全に日和ってますよね、視聴率も落ちているし、プレゼンター効果で関心アップを狙っているのでしょうか、強引に日本に例えると紅白みたいなものなので、今後、視聴率が劇的に上がることなんかないのでしょうね~。
今回、スミスははっきりと被害者だと思います。
自分も好感度、爆上がりです^^
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ゆみさん、 (まっき~)
2022-09-29 19:59:09
日本ではゆみさんのような意見が多いのですけどね、
米国では逆のようです。
これでたとえば、日本は戦争の国、米国は平和の国…になっているのだとしたら「なるほど」となりますけど、そうなってないじゃないですか(^^;)
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