マックンのメモ日記

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ホーキング博士、ブラックホールで新説?

2015-08-26 17:55:32 | 宇宙・サイエンス・科学技術
英ケンブリッジ大学教授で著名物理学者のスティーブン・ホーキング博士(73)は25日、スウェーデン王立工科大学で開催された会合で、物理的情報がブラックホールの強い引力をいかに回避し得るかに関する新たな理論を提示しました。博士は自身の理論が物理学者にとって最も不可解な謎の1つを解き明かす助けになることを期待しています。

 ホーキング博士は6日間の予定で開催されている「ホーキング輻射会議」で新理論を提示しました。30人余りの著名物理学者が参加するこの会議は非公開で、「ブラックホール情報パラドックス」として知られる謎について論じ合うのが目的です。

 宇宙に存在するブラックホールは一定の大きさの恒星が燃え尽きて内側に崩壊すると形成されると言われています。崩壊後に残った物質が中心に向かって吸い込まれるように小さく圧縮され、やがて周辺には非常に強力な重力場が生まれる。科学者たちは長年、ブラックホールの重力から逃れられるものは何もないと信じていました。宇宙最速の光でさえもです。

ところが、ホーキング博士は1974年にブラックホールから熱放射があることを提唱しました。現在、物理学者の大半はこの説が正しいと確信しており、この現象は「ホーキング輻射」と呼ばれています。さらに博士の研究は、熱放射があるブラックホールは最終的に蒸発し、ここに吸い込まれたあらゆる物質に関する情報はすべて永遠に消滅することも示していました。

 ここで謎が生じます。原子や素粒子レベルで物理現象を扱う量子力学では、たとえブラックホールに吸い込まれたとしても、こうした情報は決して失われないというのが原則だからです。これは破ることのできない自然の法則として広く信じられています。

 この「ブラックホール情報パラドックス」をどう説明すればいいのか。一部の物理学者は、情報がブラックホールをどうにかして回避しているとの説を唱えました。しかしホーキング博士は決してそんなことは起こらないと声高に主張していたのです。その約30年後、今度は博士自身が、ブラックホールから情報が漏れ出すことを計算で示してみせたのです。問題はそれがどのように起こるかということです。

そして24日夜、ホーキング博士は約3000人の聴衆の前で行ったブラックホールに関する講演の最後に、我慢できずに新理論の先行宣伝を行いました。博士は「ブラックホールから情報がいかに戻ってくるかについて発見した」とし、「明日のカンファレンスでそのことについて話す」と述べたのです。

 博士は翌25日、物理学者と一握りの聴衆に向けて、非常に専門的なプレゼンテーションを行い、「情報はブラックホールの内部ではなく、その外縁(境界)に蓄えられる」との新理論を提示したのです。

 博士はもともと、ブラックホールから熱放射があるとしても、その放射にはブラックホール内部に吸い込まれた物質の情報は含まれていないと考えていました。しかし、ブラックホールに吸い込まれたすべてのものはホーキング輻射の発生の仕方に影響を及ぼすというのが博士の新たな考えです。つまり、吸い込まれた物質の情報は、実はホーキング輻射に蓄えられていると。情報が失われたわけではないため、量子力学の要である重要な原則も破られていないというわけです。

会議に参加した物理学者たちは興味深い理論だとしながらも、さらに理論を煮詰める必要があると指摘しました。

 フランスのエクス・マルセイユ大学の物理学者らは「情報パラドックスが解き明かされたとは言えない」としながらも、「だがあのスティーブンが言うことだ。誰もが真剣に受け止めるだろう」と話したのです。

 ホーキング博士の理論は、1999年にノーベル物理学賞を受賞したオランダ・ユトレヒト大学のヘーラルト・トホーフト教授が提唱した説と重なり合います。同教授の説は1996年に発表されたのですが、教授によると、長い論文の中に埋もれていたため、あまり注目されなかったといいます。

 今回の会議にも出席したトホーフト教授は当時の論文の中で、「ホーキング輻射はブラックホールからの情報を確かに含んでいると説いた」と話します。しかし、1996年の研究方法はあまり見込みがなかったと言います。「いくつか仮説を立てて計算したが、あまりに多くの情報」がブラックホールから出ている結果になったからです。

トホーフト教授は同じ理論の「ホーキング博士版」が今後大いに発展するかどうかは不明だと話し「20年前に私がいた場所に今、彼(ホーキング博士)がいる」とし、「彼がこれを新説だと発表しても、心は躍らない」と述べたのです。(ソースWSJ)