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流山児事務所「MISHIMAワークショッププロジェクト」

2008年04月06日 | 芝居小屋
流山児★事務所MISHIMAワークショッププロジェクト」「綾の鼓」「道成寺」(作/三島由紀夫   演出/流山児祥) を金曜日の夜、観に行った。

早稲田駅近くの小さな小屋、スペース早稲田で、三島由紀夫の戯曲2作を上演するという試み。

もちろん役者の息遣いが聞こえそうなほど近い。だからこそ、各人の好不調がわかってしまう怖さがある。
近くに主宰の流山児さんが座って観ているというのも小劇場ならでは。
特に、今回のワークショップは同じような役を4、5人で演じるので、演技の優劣が特に観客にわかってしまう。

まずは能をモチーフにしたイントロダクションから、「綾の鼓」へ。
物語りは、70過ぎのビルの管理人の老人が、隣家の貴婦人に恋心を抱く所から始まる。しかし、それを知った取り巻き連中が老人をからかうため「この鼓を鳴らしたらその思いを受ける」という手紙を鼓と一緒に老人のもとに送るのだが、その鼓は綾で張ってあり、決して鳴らない鼓だった。それに気づき愚弄されたと老人は自殺してしまう。幽霊となった老人と貴婦人の対話はいかに、という内容だ。
三島の戯曲でよく上演される「卒塔婆小町」も、老人と若者の対話だが、相対の仕方はまったく違う。

さて、お芝居にもどろう。今回の芝居では、最初女が男役、男が女役を演じ、最後に入れ替わる演出となっている。
貴婦人は、最初は女面の人でもないのでどうかなと思ったが、喋らずしぐさだけのときは段々貴婦人ぽく見えてきて巧かった。ただ、ラスト、話し出すと普通の喋りで、貴婦人らしい大様さやため、上からモノを見るような喋り方がなく残念に思えた。美輪さんまでいかなくてもいいが、英映画の上流階級ものを少し観ると勉強になると思う。

女優陣では鼓のお師匠さんが新人落語家か太鼓持ちのようで…残念。もっとニヒルで川端の「千羽鶴」の主人公のように演じたらいいのにと思う。見た目についても、着物の腹にタオルを入れたほうが良かったのでは。
かっちりする必要はないが、他の役者と異なる役をもらえたのは儲けものと思って役作りしてみたらと思う。脇の所作、見栄え一つで芝居の印象は大きく変わるのだから。
主役の老人役の女性は、老人のときかわいらしいおじいちゃんで、老いらくの恋を気持ち悪いとは観客に思わせず、純愛が哀れに思える演技でよかった。欲を言えば、貴婦人に役を変わったら、男性が貴婦人を演じていたときと違い、ちょっと猛々しくなってしまって、同一人物としてのつながりが途切れてしまったように思えたのが残念だ。それと、もっと幽霊をも狂わせるくらいのゾッとする薄ら寒さを感じさせるようになれば面白いと思う。昔、同劇団で演じられた「Happy Days」(ケラさん作)の篠井英介の演技は心理的に最後ゾッときたのを思い出す。

2本目の「道成寺」。
物語は金持ち相手に高級骨董家具を売る店。客が高値を吊り上げている所に、踊り子が飛び込んでくる。この箪笥の中で恋人が死んだから価値はないというのだ。客は皆去っていき、踊り子と店主の対話が始まる。

個人的にはこちらが良かった。「妖し」の感じが良く出ていた。
また、脇役だが客の1人を演じた茉莉以という女優さんが突出して巧かった。声の発声の仕方も違うし、皆着替えて黒装束で4人次々に喋っていく場面だと、差が出てしまっており、ワークショップならではだなといえる。この女優さんが主役級で演じる芝居があれば今後観たいと思う。
他の役者さんたちもそれぞれコミカルも有りで奮闘していた。
難点は、主役の踊り子役の男性が声が枯れてしまっていたのが残念。

ともかく、三島由作品をまた挑戦してもらいたいなーと思った夜でした。
(来月は美輪明宏の「黒蜥蜴」で、三島作品をじっくり観ようと思う!)

「MISHIMAワークショッププロジェクト」「綾の鼓」「道成寺」
2008年4月2日(水)~7日(月) 【作】 三島由紀夫  【演出】流山児祥


  
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