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ヤコブへの手紙 (映画)

2011年01月16日 | 映画
映画「ヤコブへの手紙

北欧フィンランドの作品。観終わった後にジワーッときます。

殺人を犯し服役中の女性レイラが恩赦となり、ヤコブ牧師の家に住み込むところから話は始まります。
このレイラ、顔はふてぶてしく目はにらみが利き、体格も女子プロレスラーのようで、一言発するのも凄みがあって、まさに女アウトローという風体なのです。
対するヤコブ牧師は盲目の高齢者で、今にも倒れそうですが、清貧の中で信仰に生きる人。


レイラが牧師から頼まれた仕事、盲目の彼のために手紙を読むことなのですが、その手紙は、教区の信者からの悩みや願いが書き綴られたものでした。
こんな2人をおっかなびっくり見つめる者が、この手紙のたばを持ってくる郵便配達員です。殺人を犯した凶悪犯が神父になにかするのではないかとか、なんで神父はこんな女をひきとったのかとか思いながら、遠巻きに見ています。そういう意味で、彼は、村の人全てを表している存在かもしれません。

牧師さんの生甲斐にもなっている手紙をレイラは段々読むのが嫌になり、牧師さんが盲目であるのをよいことに隠してしまいます。「手紙は来てないよ」ということにしてしまうんです。自分の境遇と比較してくだらない悩みとも思ったのかもしれません。かなりレイラはつらい目にあって人を信じられず捨て鉢になっているのが語らずとも分かるからです。
でも、その張り合いをなくした牧師さんは段々衰弱して床についてしまいます。
あることがきっかけで、出て行こうとするレイラ。でも、戻ってきた時、手紙の重要性、自分が恩赦を何故受けられたのかを知り、自分がなぜ殺人を犯したのかを牧師と語り合ううち、荒んでいた心が溶けていきます。

ヤコブさんは、牧師という職だから正しいことを率先して行っているのではなく、人の善なる思いや望みが私という器を使って行われているのだということをレイラに示唆します。そしてレイラも目から鱗が落ちるところがぐっと来ます。それが何から分かるのかは、映画を観てください。

ラスト、牧師さんはどんな肩書きが高く厚遇の聖職者より幸せに感じたろうと思います。
なぜ「ヤコブの手紙」ではなく、「ヤコブへの手紙」なのかも分かるでしょう。

やはり人間は一人じゃない。全国に広がった伊達直人現象じゃないけど、思いをつないでいくことが何かを生み出し、凍った心も溶かす。そんな映画でした。

<ストーリー>元囚人のレイラ(カーリナ・ハザード)は、ヤコブ牧師(ヘイッキ・ノウシアイネン)の家に住み、盲目の牧師のもとへ寄せられる手紙を読んであげることに。人生に嫌気がさしているレイラだったが、次第に牧師に対して心を許すようになっていく。そして手紙が届かなくなって気落ちした牧師に、レイラはある秘密を打ち明ける。
監督:クラウス・ハロ
出演:カーリナ・ハザードヘイッキ・ノウシアイネン、ユッカ・ケイノネン、エスコ・ロイネ
1月15日から銀座テアトルシネマでロードショー中
公式HP http://www.alcine-terran.com/tegami/
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