星槎教育研究所ブログ★相談員の部屋

みんなちがって、みんないい。一人ひとりの宝物を見つけながら。

「永遠の少年」①~ひきこもりとイカロス

2008-08-25 06:18:32 | コンパス事業~ひきこもり・NEET 
昔 河合隼雄先生の著作をよく読んでいたころ
ユングの原型の中の「永遠の少年」は
なんて ひきこもりの人たちにぴったりなのだろうと思った。
  

河合隼雄 「影の現象学」より引用
現代に生きている永遠の少年たちは、必ずしも年齢が若いとは限らない。
彼らは習慣にとらわれず、直線的に真実に迫り、理想を追い求める。
彼らの主要なテーマは、「上昇」であり、理想を求めて急上昇を試みる。
しかし彼らは水平方向に広がる時空間、つまり、「現実」とのつながりの弱さにその特徴を持っている。
理想を追い求めつつそれを現実化する力に欠けるのだ。
彼らのもっとも不得手なことは、待つことであり忍耐である。
現実との繋がりを失った時、上昇は停止し急激な下降が始まり、しばらく無為の生活が始まる。彼らは自分が社会に適応できないのは、自分の特別な才能が理解されないためであるとか、
こんな誤った社会には適応する必要がないからだとか、
ところがふとある日、彼らは何かに憑かれたように使命感に燃え、急上昇を始める。
その時の力強さは周りの人を驚嘆させ、時には大きい期待をさえ呼び起こすが、
結果としてはお決まりの落下と無為が訪れるのみである。
少年が光を求めて高く昇れば昇るほど、彼の影は母なる大地に大きく投影される。
それは親であり、社会であり、国である。
それらに向かって彼らは、すべての悪の責任を取ることを要求するが、
自らの影を背負って立とうとはしない。」

「永遠の少年」はギリシャ神話のイカロスのイメージ。
父とふたり、ミノス王に閉じ込められた塔を抜け出すために
鳥の羽を集めて、大きな翼をつくりロウでからだにとめた。
父ダイダロスは、イカロスに言った。
イカロスよ、空の中くらいの高さを飛ぶのだよ

あまり低く飛ぶと霧が翼の邪魔をするし、


あまり高く飛ぶと、太陽の熱で溶けてしまうから。

しかしイカロスは 太陽に近づきすぎて翼のロウがとけてしまい失墜する。

ほどほどの真ん中が飛べない。
「今度こそがんばる!」と覚悟を決めてがんばろうとする。
飛び立って 太陽の熱でロウがとける。失墜する。
あるいは飛ぼうとするが 現実は飛び出すことができない。
あるいは飛ぶ準備にがんばりすぎて 疲れてしまう。
高揚と失意をくりかえし、やがて飛ぼうとすることもできなくなる。

永遠の少年についてはいろいろ語られている。
・ 「大人」の世界は「汚い」。だからそんな社会には適応できない。
・自分の時が「まだ来ていない」 まだ理解されていない。
・「永遠の少年」は、独創的な才能を持ち、自由気ままに空を飛び回る少年の感性の持ち主。
・一方で、社会にうまく適応できず、生きることに不器用な人間。
・心は少年のまま たとえ身体的には成人し、知的に発達していても心は未熟な段階。
・ 想像力豊かで、ファンタジー。言い方を換えると妄想。
・ 既成概念、常識がうすいので ユニークな発想。
・ 饒舌に語る。話しをすれば、面白い話し相手となる。
・ 忍耐力・持続力が無く、飽きっぽい。
・ 社会で要求される、義務や責任に応じることができない。
・ グレートマザー(これもユングの原型のひとつ)の影響を受け、女性嫌い、女性恐怖、
女性遍歴になることも。

東京都主催の
「ひきこもりやNEET等の若者の社会参加を支援するための合同相談会」に
参加してしてきた。

開始の11時から終了の17時過ぎまで
星槎のブースにはずっと待っている方がいらして
途切れることなく相談を受けていた。

相談はほとんどが保護者の方で
長年にわたるひきこもりにつきあい
憔悴しきっていらっしゃる。
お一人おひとり状況はちがうし
抱えている困難もちがう。

しかし 今も家から出られない方々に共通しているのは
「あのとき~していれば こうなっていたはずの自分」「こうあるべき自分」と
『現実のいまある自分』のギャップが受け入れられずにいることではないだろうか。
そうなったのは ~のせいと 親、自分、学校〈同級生・先輩・教師・・〉を責めつづけている人も多い。

太陽の近くまで飛ばなくてもいい。
自分の飛び方が見つかれば。



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