読書おぶろぐ

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孤高のメス 外科医 当麻鉄彦 (上)

2010年02月13日 19時35分56秒 | 医療 (医療小説含)
大鐘 稔彦氏の作品。
近々、映画が公開されるやうですがその原作。

原作は上下巻で各上下2段の630ペイジほどの分厚さ。
上巻を読み終わつた時点なのですが、感想を。

大鐘氏は1968年京都大学医学部をご卒業され、早くから「癌告知」問題に取り組み
「癌患者のゆりかごから墓場まで」をモツトーにホスピスを備えた病院を創設し
医療内容、手術の公開など先駆的医療を行なはれ1999年1月より僻地医療に従事
されてゐるとのことです。

第一線臨床医であられながら、「高山路燗」のペンネームで小説エッセイ、短歌、
コミツクの原作も手がけられてゐるとのことです。

本作は、一人の外科医 当麻鉄彦を主人公に彼を取り巻く様々な環境を描きます。
当麻を元に、日本の大学病院、米国の医療現場、日本の病院勤務の「しがらみ」
や裏事情、保険診療、自費診療、患者の立場、マスコミ等々が鮮やかに描かれてゐます。

当麻鉄彦は、「類希な才能を持つた外科医」なのですが、当麻の医師としての基本方針に
対する決意は固まつてをり、当麻はその志を貫くべく日々の医療を行ふ。

一方で、当麻のプライベートも描かれ、独身であることの理由や結婚を考えるいきさつ
なども描かれる。
ここで不思議だつたのは、「この人は親の介護その他の問題で女手が欲しいと思つて
結婚を考えるのか?」といふことであつた。

確かに親の介護といふのは将来必要になるのだが、男の家のはうだけの問題ではなく
女の家のはうの問題としても存在するものである。
男女双方の親の介護が必要になつた時にだうすんだろ?と思つた。
自分の親の介護だけを考えて結婚した=相手の女に親の介護を期待した場合、
相手の親の介護が先に必要になつた=自分の親の介護が必要になつたときに、だうする?

世間は皆、自分の親のはうだけを考えて結婚すんのかなあ・・・? だから後々モメる(?)のか?

でもね~
どつちの親がだうなるなんてのは、それこそ「神のみぞ知る」といふやつで勝手に計算して
アテにしたつて、「取らぬ狸の皮算用」ではないのか? アテがハズれたときに文句
言はれてもね~
と考えながら読む場面もあつた。

いずれにしろ、この物語は一人の外科医を通して世間の様々な問題を描き、興味深い
作品です。
これから下巻を読みます。