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偽装請負 格差社会の労働現場

2010年02月16日 22時03分30秒 | 社会・報道・警察・教育

朝日新聞特別報道チームの取材による、ルポです。
朝日新聞では2006年夏より告発報道を展開し(表紙裏扉より)、この本はそのまとめと
思はれます。

まづ
「偽装請負」とは何なのか?
「請負」といふからには、商品の製造に関するやりとりであらう、偽装つてことは造つてもない製品を造つたことにでもしてたのかなあなんて、漠然と想像して手に取りました。

しかし、「長期不況で一気に拡がった「偽装請負」という雇用形態」(表紙裏扉より)の文字に、「え」と思ひました。

「雇用形態に『請負』なんてあるの??」と思ひました。 「派遣なら分かるが、請負つて何?」とあたくしと同じ疑問を抱かれる方に・・・
プロローグより(P26-P27)より引用してご説明を・・・・・

まづ、請負の場合:
発注者(メエカア)と請負業者で請負契約を締結
労働者への仕事の指示は請負業者からなされ、労働者の雇用は請負業者が行なふ。
発注者から請負業者への支払いは、製品の出来高に応じて支払われる。支払い・契約は
「製品」といふ物品を基準とし「労働者人数」「労働時間」など労働者に関わることはない。(依頼された仕事を完成させ、その結果を引き渡して報酬を得る)

派遣の場合:
派遣先(メエカア)と派遣会社(派遣元)が労働者派遣契約を締結
派遣会社が自己の雇用する労働者を他人(派遣先メエカア等)の指揮命令の下に派遣し
派遣先のために労働に従事させること。

偽装請負の典型例:
請負業者と発注者が請負契約締結
請負業者と労働者が雇用契約締結
発注者(メエカア)側の正社員が請負労働者に直接指揮命令して働かせ、実態は労働者派遣
になつてゐる。

これで一体、企業(メエカア等)が何を得をするのかといふと・・・
「必要がなくなればいつでも請負契約終了」として労働者を解雇できる。
派遣と違つて一定期間を過ぎたら直接雇用の申し込みをする義務が無い。
雇用保険・社会保険や健康診断などの責務を負わない。

・・・・・・ すごいですねえ・・・ これ、明らかな違法行為なのです。監督は労働基準監督省でなく、ハローワーク(公共職業安定所)ださうですが、ハローワークでは「雇用対策」のはうに追はれて実質「野放し(?)」になつてゐるやうです。

工場労働者の派遣契約打ち切りが大きく社会問題になりましたが、その中にこの「偽装請負」もあつたのではないかと思ひます。
本書は2006年より新聞連載され、2007年4月に刊行されたやうですのでその後の世の動きについての記述はありませんが、事態は全然変はつてないのですね。

本書で名指しで取り上げられてゐる企業が2社ありますが、その企業はどちらも過去に「偽装請負」で指導を受けてゐたのださうです。
しかし、現状も「偽装請負」は続いてゐるやうす・・・・ しかも、企業側は「請負とは知らなかつた」「請負では無い」と否定してあらゆる手段を尽くしてゐるやうです。

この2社だけではなく、日本中いや世界中の「大企業」といふ工場を持つてゐる企業は同じやうなことをしてゐるのだらうなあと思ひます。
さう考えると、「こんな会社の製品買ひたくないなあ」と思ふけど、買へる会社、あるのだらうか?

問題は偽装請負をしてゐる企業(メエカア等)だけでなく、「人を派遣」する側の「請負業者」にもあります。
驚く無かれ、「違法派遣」で摘発された会社が絡んでをりました。

メエカアが、「偽装請負」による労働力の調達を始めたのは、景気が後退し人件費の安い海外へと工場を移設すると産業の空洞化が起きてしまふ、それを防ぐため日本国内で製造を続けるには人件費削減といふ壁があり、コストを落とすためにこの方法を採用したやうですが・・・・

理論は理解できるが、もう少し「まとも」な対応が出来なかつたのであらうか?
プロローグで、自殺した若者の勤務状態が出てくるが「人間に対する扱い」とは思へない。
社員にしたら、「労働衛生安全法」とか労働関係の法律に違反することばかりであり、「自社の大事な製品を造つてくれてゐる労働者に対して、何も気遣いがないのか?」とびつくりゐたしました。
こんなところで、「正規雇用」「非正規雇用」と差別をするのは絶対におかしい。

もう一つ疑問に思つたのは、働いてゐる側の労働者なのだが。
「非正規雇用」のすることではない、かなり重要なレベルの仕事をやらされてゐる。この人たちが抜けると一時的であれ、メエカアは痛手を被るであらう。この労働内容もはつきり言へば違法であらう。
で、この非正規雇用者たちは「この仕事が好きでやりがいを感じてゐる。」として正社員雇用を望むのであるが

「なぜ非正規雇用者がそこまでしなければならないのか?」 これも理解できなかつたなあ
まあ、「仕事内容が好きだ」と言へばそこまでだが、報酬と労働条件を考へてみれば何年も留まるのが不思議といふか・・・・

といふか、「何のために正規雇用が居るのか?」と思つた。正規雇用者にさせられない労働内容や労働条件ならば、非正規雇用者にもさせてはいけないのでは?? ひたすら疑問。

自分も派遣で5年くらい働いてゐたことがある。
そのときは、好きなことをして「仕事はお金を得る手段」と割り切れる恵まれた環境だつたから「雇用契約で縛られる社員より辞めたいときに辞められる派遣がいい」と思ひ、割り切つてやつてゐた。

なので、「非正規雇用」にこんな重要な仕事をさせる会社も信じられないし、低賃金重労働で黙つて何年もやつてゐる非正規雇用者も理解が出来ない。しかも、家庭を持つてゐて専業主婦に子供2人を背負つてゐるとは! 

人にはいろいろな考えがあるが、だうしても理解できない

現在民主党が、「事務職も含めて派遣雇用されてゐる人たちを全員正社員に」とやつてゐるやうであるが。

理論はわかるが、それもだうかと・・・・ 
まづ、派遣会社が無くなるといふか、潰れるといふか、打撃を受けるのは間違いない。

新たな失業

正社員雇用で負担が増える企業で、利益が得られない企業は・・・・
消滅?
解雇?

新たな失業

クライ方向ばかり書いてしまつたが、民主党は全体のつながりを見て「全員正社員」と言つてゐるのであらうか?

話がそれたが
「偽装請負」に出てきた会社の労働者に対してしてゐることは、法律以前に人道的に許されないと思ふ。


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