ビストロ レアール

石川県小松市にある「ビストロ レアール」のシェフがつづるあんなことこんなこと

ぶどうパン

2006年05月07日 | シェフのコラム
幼いころ

いつもの食パンではなくて

たまーにぶどうパンを食べる時のあの至福

確か6枚切り位入っていて

一番 干しぶどうが入っていそうな一枚を探して選んでは得をした気分になり

それだけでは済まず

そのぶどうパンの表と裏の(どちらが裏か表か解りませんが)

どちらが多くぶどうが入っているかを表にしてみたり裏返してみたり

パンの耳の方から食べてみたり

ぶどうだけ取り最後にまとめて口に放り込んだり

幼いころのぶどうパンは私にとってとてもごちそうでしたし遊び心をくすぐる食べ物の一つでした

パン生地に薄くぶどうの色素と甘みがほんのり香り

耳ちかくのぶどうのちょっと焦げたほろ苦さ

ぶどうパンの至福

街にパン屋さんが沢山できるようになると

パンも様変わり

昔食べたぶどうパンではなく

生地とレーズンが半々ではないかと思われるほどのレーズン

干しぶどうではなくレーズン!

甘みが強く小粒のサルタナレーズンそのほか色々なレーズンを贅沢に使った

パンは衝撃的な美味しさで私を虜にしました

私がフランスに渡り

ブーランジェリーで買った

パン オー レザン

食パンの生地ではないのでタイプは違いますが

パリで初めて食べたパンのひとつで

何個でも食べてしまいたくなるような幸せな味

ノルマンディーで働いたレストランで隣接するホテルの朝食に出されるために

仕込んだパン オー レザンは

バターをたっぷり使ったブリオッシュ生地を

大理石に伸ばしクレームパティシェールを(カスタードクリーム)

一面に塗り広げ小粒のレーズンを散らし

ロールケーキのように丸め込みそれを

切り分けて

天板に乗せて 焼き上げた パン オー レザンの

美味しさは今でも脳裏に焼きついています

むかし 幼いころにぶどうを選って食べたぶどうパンの至福

ところ狭しと贅沢にレーズンが入ったレーズンパンの至福

リッチなブリオッシュ生地にレーズンがカスタードクリームから覗く渦巻状のパン オー レザンの至福

どの至福も大切にして

どれもがそれぞれに幸せを感じれる 『時』 を大事に考えて行きたいものです

母にぶどうパンをせがんでも買ってもらえないときに

なにもおやつが用意していなかったときに隠してあった

戸棚の干しぶどうを知っていた私は白い食パンに

干しぶどうを埋め込み即席のぶどうパンに仕立てたりした思い出

それぞれの

『時』の味

今のあなたは どんな『時』を感じて また 感じられますか?