Lee Konitz / Jazz A Confronto 32 ( 伊 HORO Records HLL 101-32 )
60年代終わり頃になるとアメリカではジャズの仕事が無くなり、行き場を失ったジャズメンは生活に窮するようになる。そのため、副業を持っている
ような人を除き、多くのミュージシャンたちが欧州で仕事をするようになる。それは、リー・コニッツのような巨匠ですら例外ではなかった。
幸いなことに欧州には芸術を愛する人が住んでいて、人種差別もアメリカほど酷くなく、本場のジャズミュージシャンたちは敬意をもって扱われた。
そのため、70年代の欧州ではジャズのレコードがたくさん作られている。80年代に入ると主流派ジャズは復興するので、彼らは活動拠点を再び
生まれ故郷に戻すようになるが、それまでは欧州で何とかやっていた。
コニッツもこの時期に欧州でレコーディングを行っているが、このイタリアものはとても素晴らしい。コニッツはストーリーヴィル盤で吹いていた
音色で演奏している。コニッツは初期はクールな音色一辺倒で、後期はその魅力がなくなった、と一般的には言われるけれど、これは単なる誤解
である。プレスティッジやストーリーヴィルのレコードをよく聴くと、彼は楽曲毎に吹き方を変えていて、実際は音色もバラバラだ。その中の
ノンビブラートのひんやりとした部分だけが強く印象に残ってそう言われているに過ぎない。
その代表的な音色がここでは復活している。録音状況の違いで冷たくぼやけたような印象はないけれど、音色の質感は間違いないくボストンの
レーベルで吹いていた頃のものと同一である。ピアノレスで、ギターが弱音で上手くサポートし、ピーター・インドのベースがよく歌っている。
全員がいわゆるトリスターノ・マナーに沿った演奏を再現しており、正にストーリーヴィル時代のアルトが甦った演奏をやっている。
聴いてみないとわからないものだ。
おまけに、このレコードは音質も良く、安定した音場を保証してくれる。このレーベルのこの共通デザインジャケットには食指が動かないけれど、
内容は折り紙付き、私が保証する。
これを聴き直して、私がリー・コーニッツに何を求めているかが改めて判った気がしました。トリスターノ門下であるテッド・ブラウン作/B-3「羽毛の寝床」(アレの捻り曲)にあるノンビブラート長尺フレーズこそが肝でないかと。レレレのオジサンフレーズ、と言い換えたら叱られましょうか。
時に「Fools Rush In」って、マットデニスの曲でしたっけ?
Fools Rush In はルーブ・ブルームが作った曲で、Day In Day Out や Give Me The Simple Life を書いた人ですね。
シナトラが歌ってヒットした曲です。私はズートの演奏が1番好きです。