廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ちょっとまわり道

2014年08月14日 | Jazz LP (Blue Note)

Dexter Gordon / Gettin' Around  ( Blue Note BST 84204 )


一週間の夏休み、ダラダラと無為に過ごすのは最高の贅沢です。 天気のいい午後には都内をブラブラと歩き、気が向いたらDUに寄ったりします。
そういうゆるい時間の中でデックスの探していたアルバムが8,000円で転がっていました。 盤もジャケットもこんなにきれいな状態でこの値段と
いうのはなんだか申し訳ない気がしますが、これは無欲の勝利かもしれません。

デックスの4000番台はとにかく絶対にステレオ盤で聴くべきなので、これは嬉しかったです。 こうやってゆっくりと少しずつ買っていければいいな、
と思っています。 これらは稀少でも何でもないので、別に慌てることはありません。 タイトルのように、まわり道するのも悪くない。

ブルーノートのデックスのカタログの中でこの盤はなぜか格下扱いになっているようですが、バリー・ハリスの黒く湿ったシングルトーンは
川底に向かって真っすぐに沈んでいく石のようにどこまでも重く、ボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォンは静かにひんやりと冷たく、
この2人のサウンドがこのアルバムだけに漂う独特な雰囲気を決定づけています。 この不思議なムードには忘れがたいものがあります。 
デックスはいつもと変わらず悠々として太く、それでいてどこか浮遊感のあるテナーを聴かせてくれます。

この頃になるとステレオ録音も成熟してきて、初期のような楽器が左右に強制的に振り分けられたような違和感もなく、音像がきちんと真ん中で
定位していて、楽器のきちんと分離した配置感も自然で、まるで目の前で5人の姿を見ているような気分になります。

やっぱり、実際に店舗で何千枚もある在庫の中から好きなレコードを見つけ出すのは本当に楽しいですね。 ネットに掲載されたリストなんかを
見るのとは、楽しさに雲泥の差があります。 別に買いたいものが見つからなくても全然構いません。 あのレコードはせっかくの初版だったのに
盤面にすり傷があって残念だったな、とか、いくら何でもあの値段の高さはないよな、とか思いながら家路につくのも趣きがあっていいものです。




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2 コメント

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Unknown (うみやま)
2022-11-06 23:54:18
随分な過去記事へのコメントとなり申し訳ございません。

最近やっとこのステレオオリジナル盤を入手できました。
もちろんこの盤を知ったのは当記事です。
まずはジャケがどストライクでした。
そして、サブスクで聴いてもデックスの明るく昇っていくような音色とヴィブラフォンやピアノの静かに沈みゆくような音色。といった、いくつかの相反する要素がうまく纏まりうねりとなったようなこの盤に魅了されていました。

ジャズを聴き始めて丸3年が経ちましたが、ずっとサックスが苦手でした。(ジャズ者として8割方資格なしですよね)
ムーディー過ぎるというか、パワーを感じ過ぎてう〜ん…となっていたところ、当ブログにてデックスを知ることが出来ました。
昨今のブルーノートの行き過ぎる高騰も相まって、ブルーノート期のオリジナル盤に手が出せない&そもそも市場での弾数も少ないと半ば諦めムードでした。
次第におっしゃる通り「まわり道」して出会い頭に期待しておりましたところ、先日DUさんからお迎えできました。
(Gettin’ Aroundは人気がないのか最近のブルーノート名義の再発もないため、本当にアナログで見かけません)
諭吉さんと稲造さんでややお釣りがくる程でしたが、盤の状態良い、ブルーノートなのに気持ちが前向きになれる音質で大満足です。笑

ちなみに余談ですが、DUスタッフさんと話しましたが、やはりデックスはGo!が一番人気だそうです。
再発盤でしか聴いていませんが、この盤程にはオリジナルを所有したい!とならないのですよね…
まだまだジャズ初心者です。。。
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Unknown (ルネ)
2022-11-07 08:33:06
こんにちは。古い記事へのコメント、大歓迎です。

ゲットされたとのこと、おめでとうございます。よかった、よかった。ゆっくりと楽しんでください。

ブルーノートは以前は普通に在庫としてどこのお店にも並んでいた、ごく普通のレコードでした。安定した人気はあるので回転はするものの、次々と新入荷があって、焦って買わなくてもいつでも入手できるレコードでした。Somethin' ElseとかOut To Lunchとか、Donald Byrd、Joe Henderson、Grant Greenの4000番台とか、本当に見飽きるくらい転がっていました。

状況が急に変わったのは、この3~4年ですね。コロナの影響もあるでしょうが、どうもジャズのレコードを買う人達の世代交代・入れ替えがこの時期に重なったみたいです。ブルーノートを欲しがるのは概ねジャズを聴き始めてまだ日が浅いファンか、高いレコードがいいレコードだと思っている人のどちらかです。カタログとしての情報が1番纏まって整備されていて入門者にとって一番最初に目に触れやすいのがこのレーベルということもあるし、オリジナルの値段が高騰し過ぎたせいで誰も手放さくなった、という悪循環のせいもあります。

ただ、そういう網からポロポロと零れ落ちるものもありますので、気長に適価のものが見つかるのを探せばよろしいかと思います。コレクターはレコードを買い続けるので、必ず資金が尽きてレコードを売るものです。気長に探せば、いずれ手に入りますよ。
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