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"私が殺したリー・モーガン" のテーマ

2017年12月09日 | Jazz LP (Blue Note)

Lee Morgan / Search For The New Land  ( 米 Blue Note BLP 4169 )


来週末からドキュメンタリー映画「私が殺したリー・モーガン」が日本で公開される。 リー・モーガンはなぜ殺されなければいけなかったのか、そして本当は何が
彼を殺したのかに迫った作品として先に公開されている海外のレビューを読むと概ね評判は悪くないようだ。 彼の私生活のアウトラインはわかっているので
映画の内容は大体想像がつくけれど、私が驚いたのは映画のテーマ曲として、この "Search For The New Land" が選ばれているということだった。

このアルバムはウェイン・ショーターやハービー・ハンコックと組んだ意欲作で、私はブルー・ノートのモーガンのアルバムの中ではこれが一番好きだ。
ショーターはこの共演が縁となって、2ヶ月後の "Night Dreamer" でモーガンを呼ぶわけだけど、ここのでショーターのプレイは際立って素晴らしい。 
グラント・グリーンが入っているのも珍しいが、これはアルフレッド・ライオンの意向だったのだろう。 巷で言われるほど彼の存在が浮いているとは思えず、
彼のホーンのようなプレイが控えめに加わっていてとてもいいと思う。

このアルバムのいいところは全曲がモーガンのオリジナル曲であり、しかもその曲調全体が物憂げなトーンで染められたコンセプトアルバムになっているところだ。 
過去のハードバップとは決別して新しい時代の空気を志向した楽曲を作りあげており、彼の作曲能力が演奏力並みに卓越していたことが判る内容となっている。
彼の作曲力はもっと評価されるべきなのだ。 このアルバムの雰囲気は後続の "Night Dreamer" に非常によく似ていて、私はショーターがこのアルバムに
強くインスパイアされて"Night Dreamer" を創り上げたのだと思っている。

モーガンは自身のトレードマークであるきらびやかな演奏を封印・後退させて、表現したかった音楽コンセプトを守るスタンスを貫いている。 よく考え抜かれた
音楽がしっかりと刻まれている。 彼の音楽家人生の後半に生み出された作品は前半に負けないくらい濃かったのだということが映画の公開をきっけかに
広く正しく再認識されるといいのに、と思う。



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