Ernie Henry / Seven Standards And A Blues ( Riverside RLP 12-248 )
このレコードがうちに来た時は、ジャケットの表面には薄黒いリングウェアが土星の輪のようについていて、盤もジャリジャリというノイズが
出ていました。 これは返品かな、と思ったのですが、一応掃除だけはしてみるかと思い、盤はレイカのA液・B液で拭いてみるとノイズは
無くなりました。 問題はジャケットですが、このレコードは表面がラミネートコーティングされているので、試しにブラスティック消しゴムで
軽くこすってみると黒墨は消えていきます。 やりすぎるとラミネートも傷めてしまうので、時間をかけてゆっくりとこすっていくと、
思った以上にきれいになりました。 まあ、これなら返品することもないか、ということで一段落しましたが、そもそも買い手にこんなことさせるなよ、
と思いました。
レコードを購入する際にはいろんないきさつがあって、いいこともあれば悪いこともある。 愛好家はみんなそれで苦労していて、ネットでも
いろんな話を知ることができます。 買い手にも問題のある言動が多いのでしょうが、売り手にも最低限の礼節が欠けていると思うことが多いのも
事実です。 昔は購入チャネルが限られていたので買う側がいろいろ我慢しなければいけないことが多かったですが、現在はそんな我慢をする必要は
全くありません。 昔のことを知っている身としては、今の状況はまるで夢のようです。 今買わなければ今度いつ出会えるかわからない、
なんていうのはもはや今ではほぼあり得ない話だし、購入チャネルや機会の数の多さは圧倒的に買い手側に有利な状況なので、不愉快なことを
我慢する必要はない。 気持ちのいい音楽生活を送ることを最優先すればいいと思います。 買う際に不快なことがあったら、それは自分が
不必要な無理をしてしまったからなんだな、と思ったほうがいいんでしょうね。
アーニー・ヘンリーは大成する前に亡くなってしまった不幸な数多くのミュージシャンの1人ですが、レコードが残されたお蔭で今でもこの人のことを
語ってくれる人がいる、幸せな人です。 今では掃いて捨てるほどあるアルトのワンホーンも、この録音当時は数が少ないせいもあって、これは
レコードとしては少し目立つ存在かもしれません。
ブリリアント・コーナーズに参加していたせいもあってか、クセのある吹き方だとよく言われますが、私はそう感じることはありません。
現代のいろんな演奏を聴いた耳には、意外と素朴で普通に伸びやかな吹き方に聴こえます。 タイプとしてはソニー・クリスを思わせますが、
アルトの音色そのものはキャノンボールにとてもよく似ています。 そこがオリン・キープニューズ好みだったんでしょう。
スタンダードを全てアップテンポで処理していて、全体的にはメリハリがなく音楽的な深みはありませんが、アルトの音と一本気な吹き方で
最後まで聴かせてしまう感じです。 内容的には特に優れているとは思いませんが、演奏の潔さを上手く捉えられているな、と思います。