廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

渡米前の Victor Feldman

2014年08月10日 | Jazz LP (Europe)
私はアメリカ西海岸のロックが昔から大好きで今でも日常的によく聴くのですが、そういう音楽の中でヴィクター・フェルドマンの名前を
時々見かけます。 彼は渡米して西海岸に住んだので、自然とそういう人たちとの交流ができたのでしょう。 昨日もアーロ・ガスリーの
CDを聴いていたら彼の名前が出てきたので、こんなところにも参加してるのかと少し驚きました。

ヴィクター・フェルドマンは変化にきちんと対応できた賢いミュージシャンで、アメリカに移住してから音楽の幅が大きく拡がりました。
ロックのレコーディングにも積極的に参加したけど、そもそもそういう人たちから誘ってもらえるということが凄いことです。
英国ジャズで好きな人はいませんが、唯一、この人だけは自分から殻を破って外へ行くことができたので偉いなと思います。

渡米前の若い頃は、英国でオーソドックスで辛気臭いジャズを真面目にやっていて、その片鱗は少し記録に残っています。



Victor Feldman Septet  ( Tempo LAP 5 )

ディジー・リース、ジミー・デューカー、デレク・ハンブルが加わった七重奏団による演奏ですが、これが例によって何がやりたいんだかが
よくわからない演奏に終始しています。 アメリカの白人ビッグバンドのスタイルで退屈な楽曲をやっているのですが、若者たちが集っているせいか
勢いはあります。 ただ、聴いていてもすぐに退屈になるので、ディジー・リースの音はドナルド・バードにそっくりだなあ、とか、デレク・ハンブルの
アルトソロが聴けるのは珍しいけどこの人はなんでリーダー作がないのかなあ、とか、そういうどうでもいいことを考えるようになります。

一定の調性とリズムの上で持ち寄った楽器たちがただ鳴っているのを聴いているだけで、音楽を聴いているという実感が持てません。
私が英国ジャズを嫌うのは、そういうものが圧倒的に多いからです。

聴き終わっても、どういう曲だったのかがさっぱり思い出せないし、どういう演奏だったのかも思い出せない、管楽器が勢いよく鳴っていて、
その背後でヴィブラフォンが鳴っていたなあ、という印象しか残りません。 どこかでこの音楽が流れていても、自分がそのレコードを持っているとは
全くわからないんじゃないか、と思います。 裏を返せば、聴くたびに初めて聴く演奏のように思えるから新鮮かもな、という訳のわからないことに
なりかねないレコードです。



Victor Feldman / Modern Jazz Quartet  ( Tempo LAP 6 )

こちらはヴィブラフォンにピアノトリオという編成でスタンダードも少し入っています。
明らかにMJQを模倣していて、全体的にしっとりとして落ち着いた演奏になっていて、これは内容的にはいいんじゃないかと思います。
ただ、この10inchくらいの長さでちょうどいい感じであって、これ以上長くなると変化の無さに飽きてくるだろうと思います。


ヴィヴラフォンはピアノとパーカッションの合いの子のような楽器で、きれいな音がなることにかけては随一ですが、インパクトがある分、
最初の感動はすぐに薄れるし、人間の身体に直接触れずに鳴らすので音色の変化も出しづらい。 これ一本でやっていくのはいろいろ難しいだろう
というのは容易に想像できる訳で、この人もピアノやパーカッションでもレコーディングするようになります。 でも、この人は楽器の種類だけ
ではなく、自分がやる音楽そのものも拡げていけたので、音楽家としての寿命は長かった。 上記のレコードに参加している他の面々はそうは
なれなかったわけで、楽しきゃそれでいいでしょ、ということだけでは世の中やっぱりマズイようです。




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