廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

未発表を掘り起こす意義

2019年07月21日 | Jazz LP (復刻盤)

Bill Evans / Live '66, Libe '80


ここのところ色々と忙しくて、このレコードたちのことをすっかり忘れていた。 世間でもまったく話題になっていないみたいだし、聴いている人は
少ないのかもしれない。 エヴァンスの場合は異例の復刻ラッシュが続いているから、聴き手側も有難みがなくなってきているのかもしれない。
ずいぶん贅沢な話だと思うけど。

私自身はこの2枚のアルバムを聴いて、3年前にレゾナンスが出した最初の掘り起こし盤以降続いている復刻ラッシュの中では最も優れた演奏だと思った。
特に66年のゴメス、リールとの演奏は、私たちが最も愛するリヴァーサイド時代のエヴァンスの雰囲気そっくりの演奏で、これは最高じゃないかと思う。

これらの掘り起こしで必ず陰口を叩かれる音質面は、ナローレンジ気味で音圧もさほど高くはないけれど、レゾナンスのような好き嫌いの分かれる
人為的な着色は施されておらず、とても自然なサウンドだと思う。 ピアノ、ベース、ブラシ、どれもが自然な音色で何のストレスも感じない。
どちらもテレビ放送用に収録された映像の音源をレコード化したものなので、元々オーディオ的な発想はないわけで、それに対して音質云々と言って
みたところでどうしようもないのだ。 掘り起こし盤というのはそういうものだ、と頭を切り替えて演奏を楽しむほうがいい。

しかし、これだけいろんな音源が掘り起こされてもなお、聴き応え感の尽きないビル・エヴァンスという人はどこまで深いのかと思う。 次々とリリース
される演奏を片っ端から聴いていっても、同じような演奏は1つとしてなく、それぞれに独立した感銘を受ける。 80年のライヴでの "Nardis" の解釈
の大きな拡がり方を見れば、彼の音楽には無限の可能性があるんだということがよくわかる。 ただ単にお馴染みの曲を手癖だけ弾き流していた人では
なかった。 深い憂いを帯びた抒情感も際立ち、どこを切ってもただただ素晴らしい。

ここまで掘り起こし盤を聴いてきて思うのは、ビル・エヴァンスというアーティストは正規リリースだけでは十分実像を伝えきれていないんだなあという
ことである。 特に60年代後半以降の正規盤は少し作り込まれたアルバムが多いせいで、素のエヴァンスからは少し乖離しているところがあることに
気が付くようになった。 そこをうまく補正してくれるのが現在リリースされている未発表群なのだ。 エヴァンスという人が好きならば、これらの
掘り起こしも聴いていくのがいいと思う。


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2 コメント

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Unknown (ayasiiojisann)
2019-07-21 15:57:54
Bill Evansの映像はどれもいいですねえ。どちらも、Blu-ray,CD主に所有していますが、Jazz好きを吹聴する方々は何故か映像を無視するか、毛嫌いする。どうにも不思議です。
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Unknown (ルネ)
2019-07-21 22:18:18
こんばんは。
そう言われてみれば、私も映像をさほど熱心に見ることはありません。
なぜかなあ、あまり考えたことがなかったです。音源だけで満足してしまっているからかもしれません。
返信する

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