廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

制作企画の大事さ

2014年03月29日 | Jazz LP (Imperial)

Sonny Criss / Plays Cole Porter ( Imperial LP 8084 )


ソニー・クリスはインペリアルでアルバムを作ったことが不幸の始まりだったと思います。 このレーベルに吹き込まれた3枚は企画が安易で、
明らかにプロデューサーの失敗。 ラジオを意識したのか、1曲あたり3分程度のスタンダードをワンホーンで吹き流すだけでは、ジャズとしての
創造の息吹は芽生えようがない。 インペリアルというレーベルは元々はカリフォルニアでメキシコ音楽を録音するために生まれたレーベルで、
その後の主力はファッツ・ドミノやT・ボーン・ウォーカーだったわけで、ジャズのことは全然わかっていなかった。

当時カリフォルニアに来ていたソニー・クラークを呼んだのはよかったけど、ジャンキーで心身ともにボロボロだったし、こんな企画内容では
ただバンドのバッキングをするしかなかったわけで、これなら別にピアノは誰でもよかった。

ジャズファンはインペリアルのレコードを聴いて一生懸命彼をかばおうとするものですが、別に彼をかばう必要はないのです。
彼は十分よくやっている。 それはレコードを聴けばわかります。 技術的には、彼はパーカーの次にアルトが上手い人だったと思います。
ただ、彼の孤軍奮闘な様と企画の退屈さのギャップに人々が戸惑うだけです。

レコードでしか黄金期のジャズしか接することしかできない私たちは必要以上にレコードにこだわるけど、それは仕方ないことです。
演奏内容だけでは飽き足らず、工業製品としてのレコード本体までしゃぶり尽くす。
但し、演者が素晴らしくて、初版レコードの手の込んだ意匠がどんなに素晴らしくても、制作の企画がつまらなければすべてが台無しになる。
インペリアルの録音はそのことを教えてくれます。




Sonny Criss / At The Crossroads ( Peacocks PLP 91 )


その点、このレコードはきちんとジャズ・クインテットとしての演奏を志向していて、素晴らしいと思います。 私はこれが一番好きです。
ジャケットのデザインが象徴しているような夜の雰囲気が濃厚で、これぞアメリカのジャズだと思います。

ワンホーンではすぐに食傷気味になるのですが、トロンボーンとの2管になるとアルトの良さが引き立ちます。 特に2曲目の You Don't Know~は
素晴らしいバラードになっています。 ウィントン・ケリーのピアノもみずみずしくていいです。 きちんとした企画を用意さえすれば
この人のレコードはいいものになったのに、残念ですね。 これは時々、無性に聴きたくなるレコードで、音質も抜群です。



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