廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

残り香が漂う素晴らしい演奏

2019年12月28日 | Jazz LP (復刻盤)

Bill Evans / Live At Art D'Lugoff's Top Of The Gate  ( 米 Resonance HLP-9012B )


エヴァンス愛好家にはよく知られた音源で、過去にも何度かリリースされていたようだが、私はよく知らなかった。

音質は良好だ。レゾナンスは安定してきたと思う。正規録音ではないにも関わらず、ピアノの音がきれいに鳴っている。音の粒立ちが良く、
打鍵の際のタッチの感覚がよく伝わってくる。未発表音源の復刻としては、最良の仕上がりと言っていいんじゃないだろうか。

ここでの演奏で際立つのは、楽曲本来の良さを引き出すことに成功していること。"My Funny Valentine" にしても "Alfie" にしても、
原メロディーの良さを殺さずにハーモニーで上手くコーティングしてより魅力的なものへと持ち上げているので、単純に音楽の良さに感激する。
68~69年頃のエヴァンスにはまだリヴァーサイド時代の演奏の残り香が漂っていて、聴いていると自然と笑みがこぼれてくる。

どこを切り取ってもエヴァンスのピアノが堪能できる内容で、長く愛聴するに相応しいアルバムだと思った。これならどれだけ復刻してもらってもいい。
何枚でも聴きたいと思う。正規録音をすべて揃えた愛好家がブートに走る気持ちがよくわかる気がする。これほどもっと聴きたいと思わせてくれる
アーティストが果たして他にどれだけいるだろうか。

少し前ならこういうのはCDでリリースされて終わりだったろうが、今はありがたいことに必ずレコードも出してくれる。我々にとってはいい時代に
なったと言えるのかもしれない。RSDでしか買えない、というような面倒なことはせず、普通に出してくれればもっといいんだけど。


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