廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

幻で終わった夢

2016年10月22日 | Jazz LP (Savoy)

Chuz Alfred, Ola Hason, Chuck Lee / Jazz Young Blood  ( 米 Savoy MG-12030 )


オハイオ州で生まれ育った3人の若者~テナーのチュズ・アルフレッド、トロンボーンのオーラ・ハンソン、ピアノのチャック・リー~が地元のクラブで演奏して
いるのをサヴォイのオーナーであるオジー・カデナが聴いてその場でスカウトし、レコーディングさせたのがこのレコードだ。 ベースはヴィニー・バーク、
ドラムはケニー・クラークを充てて、録音はヴァン・ゲルダーが担当しており、ヤングブラッドというユニット名まで冠してかなり本気で売り出そうとしたようだ。
でもこの後が続かず、結局シングル3枚とこのアルバムだけを出して表舞台からは消えてしまう。 そういう意味では、幻のユニットと言っていい。

さすがにレーベル創設者の鑑識眼は見事なもので、とてもいい演奏をしているのに驚かされる内容だ。 バリバリのテクニシャンという感じではなく、
非常に落ち着いてペーソスに富んだ演奏になっている。 テナーは若い頃のズートのような感じで初々しく、トロンボーンは穏やかによく伸びるトーンで、
黒人の若者たちの粗削りで熱っぽい演奏とは対照的な端正でよくこなれた演奏だ。 若者らしい新鮮な感覚が隅々まで行き渡っていて、よくよく考えると
こういう雰囲気をもった当時のレコードはあまり他には思いつかないのに気付く。 逆に現代の若い演奏家が出す新作のCDなんかのほうに雰囲気が近くて、
サヴォイというレーベルは現代の新進気鋭のレーベルが有能な若者を積極的に紹介しているのと同じことをやっていたんだなあということを教えられる。

それに何と言っても、RVGの録った音が素晴らしい。 サヴォイのRVGは粗い音質のものと素晴らしい美音のものがあるけど、これは後者のサウンドだ。
楽器の音がくっきりと生々しく、音の1つ1つが輝いている。 立体感のある空間表現も見事で、適度な残響感も素晴らしい。 演奏が魅力的に聴こえる
後押しをしているのがよくわかる。 1枚しか残せなかったとはいえ、こんなにいいレコードに仕上がったのは幸運だったんじゃないだろうか。



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