Miles Davis / 'Round About Midnight ( 米 Columbia CL 949 )
いつ頃から言われるようになったのかよくわからないが、米コロンビアのマトリクス番号の話がまことしやかに流れている。内周のデッドワックスに
刻まれた番号のお尻2桁が「1A / 1A」とか「1B / 1C」という記号になっているが、「1A」が最初版で、その後「1B」→「1C」→「1D」・・・と回次が
上がっていき、それに従ってプレス時期が後になっていると言われている。だから「1A」が最も音が良いとされ、その分値段が高くなっているようだ。
ただ、私は個人的にこの話は眉唾だと思っていて、まったく興味がなかった。 でも、先日DUでマイルスのこの有名盤の「1A / 1A」が2万円で
売られていたのを見て、ちょっとこれは・・・・と思うようになった。
うちにあるこのレコードはたまたま両面とも「1A」で、3~4年前に8千円くらいで買った。 こんなありふれた盤に8千円も、と思ったけれど傷のない
きれいな盤だったので渋々払った。その時はマトリクスのことなんて触れられていなかったし、こちらもそんなことはまったく気にもしなかった。
でも少し前からそういう記載が目に付くようになったので、このレコードを持っている友人のところへ行って聴き比べをしてみた。彼はロックや
ソウルを聴く人だけど、この定番は持っていて、彼の番号は「1E / 1G」だった。 結果は予想通りで、スピーカーから聴いてもヘッドフォンで
聴いても、特に目立った違いは感じられなかった。
彼の見解では、ジャズの世界でコロンビアのマトリクス番号の話が出ているのはロック側からの影響だと思う、とのことだった。ロックのビッグネーム
たちのレコードは初版から何千・何万枚もプレスされて、その後も同じ単位で追加プレスされるから、他人と差別化を図りたいコレクターたちが
早くからマトリクスに着目していたそうで、きっとその話がジャズ側にも流れていったんとちゃうかと言っていた。 なるほどね。
じゃあ、ロックはマトリクスの違いで音が違うわけ?と訊いてみると、それは盤による、違うように感じるのもあれば別に変わらんのもある、
とのことで、そのへんはジャズと同じらしい。
聴き比べをしたのはこのアルバムだけなので決めつけることはできないけれど、コロンビアの場合はあまりこだわる必要はないんじゃないだろうか。
このレーベルは大手でプレス枚数がたくさんあるから、友人の彼が言うように、コレクターがちょっとでも差別化を図りたいがために無理やり
こじつけた側面が強いような気がする。 中には違いが感じられるものもあるのかもしれないけれど、だからと言って何でもかんでも同じ切り口で
処理するのは適当過ぎる。大きく眺めれば何らかの傾向は認められるのかもしれないけれど、最後は是々非々で判断するしかない。
尤も、これは店側が悪いのではなく、買う側に問題があるのだ。 マニアはこの手の話に非常に弱くて、すぐに風評に流される。 正解がない世界
だから常に不安にさらされていて、一方で店側は商売だから買い手が金に糸目をつけなければそれに合わせて高い値段にするだけのことなので
あって、中古品の値段を決めているのは、結局のところ店ではなくマニアなのだ。 おかしな値段のものは買わないという形で意思表示をして
いかない限り、高額廃盤たちの値段が下がることはないだろう。 心配しなくても、レコードなんていつでも買えるのだ。
やっぱり、そうですか。
溝はジャズに聞け、マトリックスはロックサイドの方に聞け。クラシックは・・・なんかあるんでしょう。(笑)
まあ確かに、「1A / 1A」って、それだけで、おおすげえ!みたいなものありますよね。
それを聞いてから、マトリックスをキーで自然に打つと、魔トリックっす。とか、まあトリックっす。とか、なってしまうのなぜでしょうか? (笑)
とはいえ、ウチにはディブ・ブルーベックのレコードうんとこさあるんですが、あれだけ売れたブルーベックなので、マトリックスみてみようとかと思いました。
でも、ブルーベックやJJのレコードでマトリクスの話なんて出ないですよね? マイルスの、それも一部のレコードだけでそういうことが言われるんです。
これって、不自然ですよね。 どうも、作為的な匂いを感じるわけです。 イン・ア・サイレント・ウェイでそんな話、聞いたことないです。 E.S.Pでもそんな話聞いたことないのです。
誰かがどこかで何かを企んでいる、そういうイヤラシイ世界なのかもしれません。 近寄らないほうが無難ですね。