Eddie Bert / Encore ( 米 Savoy MG-12019 )
白人版ベニー・グリーンとでも言うような持ち味がエディー・バートの良さだろうと思う。サックスやトランペットと張り合うべく
バリバリと吹くことなんて特に興味はないよ、という感じで、のんびりと伸びやかなトーンで横糸を張る。
数少ないリーダー作を出していたのは50年代で、基本的にはビッグ・バンドの中での活動がメインだったようだ。
そんな感じだったから認知度は低く、誰からも相手にされない。まあ、しかたないかなとは思う。
きっと、本人もそんなことはどうでもよかったんじゃないだろうか。
でも、私はこの人のアルバムが結構好きで、事あるごとに引っ張り出してきて聴く。
この人の音色は芯があって、バンド・サウンドの中でも埋もれることがなく、しっかりとよく聴こえる。だから、アルバム1枚を
聴き終えると、「エディー・バートのトロンボーンの音」というものがちゃんと頭の中に残るのだ。ぼやけがちな他の奏者とは
そういうところが違う。カーティス・フラーなんてその真逆で、聴いた傍からその演奏の印象が薄れていくから、大違いである。
このアルバムはピアノレスのワンホーン・セッションと、J.R.モンテローズやハンク・ジョーンズらとの2管セッションの2種類が
収録されている。ワンホーンのほうは陽だまりの中で心地よくうたた寝するような穏やかな演奏で、2管セッションの方は
マイルドで上品なハード・バップ、と表情がはっきりと分かれている。
2管の方はモンテローズがいい演奏をしていて、強い印象を残す。ブツブツと途切れる例の吹き方ではなく、しっかりとフレーズを
紡いでよく歌っている。サヴォイのヴァン・ゲルダーらしい残響の効いた音場感の中で少し甲高いトーンがよく響いている。
楽曲も適度な哀感が漂っていて、印象に残る。この時の演奏は "Montage" の方にも分けて収録されているが、1枚にまとめるべきだった。
モンテローズが主役を喰っている感じがするが、それでもこの2人の相性は非常によく、ジャケットの仲良さそうな雰囲気そのまま。
何度も言って来たことだが、サヴォイはいいアルバムを作る。オジー・カデナという人がセンスがあったのだろう。
サヴォイの良心の結晶のようなアルバムである。