世界変動展望

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江~姫たちの戦国~の放送開始に先立って

2010-12-18 00:00:00 | スポーツ・芸能・文芸
来年の大河ドラマは「江〜姫たちの戦国〜」で、江戸幕府2代将軍徳川秀忠の正室・江の生涯を描く。脚本は「篤姫」(2008年)を担当した田渕久美子。おそらくまた女性の生き様を強調したホームドラマ的な話になるだろう。

江というと自分も含めて家族の多くが悲劇的な人生で印象が強い。彼女は浅井長政と市の娘で、淀、初、江の三姉妹。もともと信長の妹・市は政略結婚で浅井長政と結婚したが、浅井の裏切りで、浅井家は織田に滅ぼされることに。幼い時に実父と弟を叔父に殺され、燃えさかる小谷城から母とともに織田に引き取られた。その後、市は柴田勝家と再婚するが、織田家の後継者争いで、勝家が秀吉に敗れ、今度は秀吉に母を殺される。

彼女は合計三回結婚するが、一度目は佐治一成と結婚したが、秀吉に離縁させられ、二度目は豊臣秀勝と結婚し、娘・完子が生まれるも、豊臣家は崩壊し、後に秀忠と結婚し、家光、忠長、和子らをもうける。

姉の淀君は秀吉の側室で、秀頼の母。しかし、嫁ぎ先である徳川氏に死に追いやられた。

徳川家に嫁いでからは、天下人の正室となり、一見成功しているように見える。息子・家光は三代将軍となり、娘・和子は後水尾天皇の中宮、その娘(つまり江の孫)は明正天皇。徳川家に嫁いでからの子孫はすべて高い地位についた。

しかし、苦労は絶えない。実の息子・家光は事実上養育権を春日局にとられ、江より春日局の方が家光に近い存在となり、江と春日局の衝突は絶えなかった。次男・秀忠だけは、自分の手で育てようと、家光以上に愛情を注いで育てたらしいが、それが原因で家光との家督争いが起き、兄弟間で骨肉の争いに。結局、家督争いに敗れた忠長は家光にいじめぬかれ、乱心し自刃した。

江や篤姫は平民や下士から見れば、高貴で、まさに高嶺の花だろうが、その生涯は現代人の基準では不幸なものだろう。むしろ、身分は低くとも自由な恋愛をし、よい家庭や仕事を築いてきた町人らの方が幸福な人生であったろう。

「江〜姫たちの戦国〜」では、おそらく「女性である江は、こんなに立派に女の人生を生きました。」と女性の人生の立派さを描くだろうが、現実の江の人生はそんなに立派で幸福なものではない。

少なくとも、江戸時代以前の女性は結婚する男性の人生によって生涯が決まるといってよい。江の母・市、姉・淀は夫と運命を共にし、死んでいった。江が将軍の正室、息子は将軍、孫は天皇と家族が高い地位に就いたのは、嫁ぎ先の徳川家が天下をとったからに他ならない。女性はまさに夫と一蓮托生だった。

昔の女性は本当に不幸だ。江も例外ではない。