世界変動展望

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逆関数の積分問題の定跡

2008-09-29 21:54:20 | 物理学・数学

[1998年度 東北大学理系前期 第1問]

逆関数の積分問題はたまに出題されるので、受験生には一度解いてもらいたい。また本問の難易度は標準的である。それらの意味で本問は推奨問題である。解答作成者は著者であるが、正解であることを確認している。

逆関数の積分は上図の関係を利用し、

『(逆関数g(x)の[f(a),f(b)]での積分)=bf(b)-af(a)-(f(x)の[a,b]での積分)』

として求めることが定跡である。本問(2)はその関係式の証明に他ならないが、さすがに上図を描いて、『図の関係から明らか。』で終わるのは証明したことにならない。

左辺の第2式の定義域をみると、いかにも「y=g(x)とおいて置換積分せよ」といいたげだ。解答では、そのように置換積分して解いている。

私は本問を最初に解いたときは、上記の定跡を知らなかった。(1)は基本問題なので誰でも解けるが、最初は(2)を解くための誘導だと思っていた。つまり、(2)の左辺のg(x)に(1)の結果を代入し、左辺を具体的に計算することで右辺に導くのが出題者の意図なのかと思っていた。

それに従い(1)で求めたg(x)を代入して計算を進めたが、うまく進まなかった。そこで考えを見直してみることにした。与式の右辺『bf(b)-af(a)』を眺めていると、「これって[xf(x)](上b, 下a){解答の一番下の式のうち、一番左の数式のこと}そのものじゃないか!」と気がついた。そこで、与式左辺の原始関数がxf(x)になると予想し、左辺の被積分関数がxf(x)の微分に等しいことを示す方針に切り替えた。そうしたら、案の定うまくいったのである。これらの考えをまとめると、解答のようになる。

後でわかったが、g(x)を具体的に代入して左辺の計算を粘り強く進めても、計算は煩雑だが右辺に行き着いただろう。具体的に被積分関数の原始関数を求めることができるからだ。最初の方針で解答が得られなかったのは、著者の計算力不足のせいだが、最初の方針断念によって新しく効率的な解法に至ったのは不幸中の幸いだった。

要するに本問を解く際も、試行錯誤の末に解答に至ったのである。解答ではいかにもすんなりと最終的結論まで解いているが、背後には7割程度途中過程の計算があるのである。問題を解く際は、最初の方針でうまくいかなくても諦めずに、別な角度から問題を見直して、いろいろ試行錯誤して考える粘り強さを忘れてはならない。本問に関しては、試行錯誤を考慮しても20分程度で解答できた。

本問の疑問点は出題者がどのような意図で(1)(2)を出したかだ。解答を見る限り、(1)と(2)は関連性がなく独立した問いに思える。そうすると、(1)の出題意図はなんだったのか疑問だ。出題するにしては、あまりにも簡単すぎる問題だからだ。単なるサービス問題ということだろうか。

私が最初に考えたように与式の左辺に(1)の結果を代入して計算させるのが出題者の狙いだとすれば、(1)(2)の関連性はある。その場合は、受験者の計算力をためしたいのだろう。しかし、計算力にものをいわせて強引に解答する方法よりも、解答例の解法の方がよほど思考力を使っていると思える。出題者としては計算力よりも思考力を試したいと考えるだろうから、解答例のような解法を想定して出題したのではないかとも思える。結局のところ、出題意図はわからない。

最初にも述べたが、本問は難度も標準的であり、受験数学の定跡を吸収する上でも良い問題なので、受験生に一度は解いてもらいたい推奨問題である。著者は定跡を知らずに解いたので20分と時間がかかったが、定跡を知っている人にはもっとすんなりと短時間で解答することができるだろう。



2 コメント

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愚直にしても・・・ (ルーク)
2009-12-25 22:05:31
(2)は技巧的ですね。
自分は愚直に解きましたが
g(x)=logx-log(1-x)なので
∫g(x)dx=xlogx-x-(1-x)log(1-x)+x+C
    =xlogx-(1-x)log(1-x)+C
となり代入すればすんなりといきます。
所要時間は全部で10分ぐらいでしょうか。

おそらく想定している解答はは代入でしょう。尤も、このぐらいの計算ならあまり計算力も要らないかと思いますが。
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方針 (世界変動展望 著者)
2009-12-25 23:25:26
そういう方法の方が(1)(2)の関連性がありますね。
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